これまでのあらすじ

『私の声が届くまで』
この物語は 恋愛 です
1章.私の声が届くまで読者597 評価2 分岐2
2章.声のない歌読者456 評価0 分岐1
3章.ごめん…… 読者423 評価0 分岐1
4章.手のひらに読者363 評価0 分岐1
5章.僕のために読者352 評価0 分岐1
6章.私の声、届くの?読者367 評価0 分岐1
7章.君の声読者326 評価0 分岐1
8章.たんぽぽ読者313 評価0 分岐1
9章.また会えたね読者314 評価0 分岐1
10章.ぽかぽか読者318 評価0 分岐1
11章.つめたい時間読者301 評価0 分岐1
12章.神様の差別読者320 評価0 分岐1
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読者
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分岐
さし
14.11.01
352
0
1
人が離れていくのが、怖い。

私には、人を惹き付ける能力がない。
優れた容姿も。抜群のセンスも。才能も。
だから親友だったはずの優子は遠くに行ってしまった。
世の中には、磁場みたいに人を吸い寄せて、いつの間にか中心になってしまうひとがいる。
うらやましいと。いつもそう思う。
でも、それでも創馬君だけは離れていかないでほしい、と切に願った。
あの日以来、アリアドネには行っていない。
なんだか違う創馬君を見てしまって、行くのがなんだか怖い。
代わりに、猫と遊んでおばあさんとお茶ばかり飲んでいる自分がいた。
今日もゴミ屋敷の前で猫を触っていると、出てきてお茶をすすめてくれた。私は、おみやげを持って中に入った。
中は、それほど物であふれていない。むしろ片付いている。
おばあさんと会うときは、メモとペンは持っいない。
おばあさんはいつも一方的にしゃべっていたからだ。
このおばあさんは、学校はどうだ、とか根掘り葉掘り聞こうとしない。だから、一緒にいても気持ちが疲れない。なんだか落ち着く。
周りから嫌われていても、私はこのおばあさんが好きなのだ。
実は、遠い親戚らしい。母さんが、教えてくれた。
子供と夫に死なれてから、孤独を埋める為に猫を飼い始めた。節度なく拾ってくるので猫の数はどんどん増えていき、今の数になった。
親戚中で、異端者扱いされていると母さんは渋い顔で教えてくれた。
優しい人なのに。
おばあさんの入れてくれたお茶に口をつけながら、ふとそんなことを考えていた。
どこで買ってくるのか、古風なお茶受け菓子の味も好きだった。
私はお気に入りの黒猫を膝に乗せながら、おばあさんの話を聞いていた。
「わしがいなくなったら、どうするんな?」
と、唐突に近くにいた猫に言った。
それから、私の方を見た。
「わしも、もういつ向こうへ行っちまうかわからんでな。なああんた、そうなったら、この子たちの家探してくれんかえ?」
私はいきなりそんなことを言われて、驚いた。
「わしがいなくなったら、この家も壊されちまうで。可愛がってくれる人、探して。な?」
私は、おばあさんの言葉にただうなずいた。
おばあさんは、まだまだ長生きできそうなくらいに元気だったし、そんなの先のことだと思っていた。

しかし、おばあさんは知っていたのだ。
もう、自分の命が長くないことを。

一ヶ月後、おばあさんはゴミ屋敷でひっそりと亡くなった。

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筆者:さし  読者:239  評価:0  分岐:1

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