これまでのあらすじ
『私の声が届くまで』
この物語は 恋愛 です
人が離れていくのが、怖い。
私には、人を惹き付ける能力がない。
優れた容姿も。抜群のセンスも。才能も。
だから親友だったはずの優子は遠くに行ってしまった。
世の中には、磁場みたいに人を吸い寄せて、いつの間にか中心になってしまうひとがいる。
うらやましいと。いつもそう思う。
でも、それでも創馬君だけは離れていかないでほしい、と切に願った。
あの日以来、アリアドネには行っていない。
なんだか違う創馬君を見てしまって、行くのがなんだか怖い。
代わりに、猫と遊んでおばあさんとお茶ばかり飲んでいる自分がいた。
今日もゴミ屋敷の前で猫を触っていると、出てきてお茶をすすめてくれた。私は、おみやげを持って中に入った。
中は、それほど物であふれていない。むしろ片付いている。
おばあさんと会うときは、メモとペンは持っいない。
おばあさんはいつも一方的にしゃべっていたからだ。
このおばあさんは、学校はどうだ、とか根掘り葉掘り聞こうとしない。だから、一緒にいても気持ちが疲れない。なんだか落ち着く。
周りから嫌われていても、私はこのおばあさんが好きなのだ。
実は、遠い親戚らしい。母さんが、教えてくれた。
子供と夫に死なれてから、孤独を埋める為に猫を飼い始めた。節度なく拾ってくるので猫の数はどんどん増えていき、今の数になった。
親戚中で、異端者扱いされていると母さんは渋い顔で教えてくれた。
優しい人なのに。
おばあさんの入れてくれたお茶に口をつけながら、ふとそんなことを考えていた。
どこで買ってくるのか、古風なお茶受け菓子の味も好きだった。
私はお気に入りの黒猫を膝に乗せながら、おばあさんの話を聞いていた。
「わしがいなくなったら、どうするんな?」
と、唐突に近くにいた猫に言った。
それから、私の方を見た。
「わしも、もういつ向こうへ行っちまうかわからんでな。なああんた、そうなったら、この子たちの家探してくれんかえ?」
私はいきなりそんなことを言われて、驚いた。
「わしがいなくなったら、この家も壊されちまうで。可愛がってくれる人、探して。な?」
私は、おばあさんの言葉にただうなずいた。
おばあさんは、まだまだ長生きできそうなくらいに元気だったし、そんなの先のことだと思っていた。
しかし、おばあさんは知っていたのだ。
もう、自分の命が長くないことを。
一ヶ月後、おばあさんはゴミ屋敷でひっそりと亡くなった。
私には、人を惹き付ける能力がない。
優れた容姿も。抜群のセンスも。才能も。
だから親友だったはずの優子は遠くに行ってしまった。
世の中には、磁場みたいに人を吸い寄せて、いつの間にか中心になってしまうひとがいる。
うらやましいと。いつもそう思う。
でも、それでも創馬君だけは離れていかないでほしい、と切に願った。
あの日以来、アリアドネには行っていない。
なんだか違う創馬君を見てしまって、行くのがなんだか怖い。
代わりに、猫と遊んでおばあさんとお茶ばかり飲んでいる自分がいた。
今日もゴミ屋敷の前で猫を触っていると、出てきてお茶をすすめてくれた。私は、おみやげを持って中に入った。
中は、それほど物であふれていない。むしろ片付いている。
おばあさんと会うときは、メモとペンは持っいない。
おばあさんはいつも一方的にしゃべっていたからだ。
このおばあさんは、学校はどうだ、とか根掘り葉掘り聞こうとしない。だから、一緒にいても気持ちが疲れない。なんだか落ち着く。
周りから嫌われていても、私はこのおばあさんが好きなのだ。
実は、遠い親戚らしい。母さんが、教えてくれた。
子供と夫に死なれてから、孤独を埋める為に猫を飼い始めた。節度なく拾ってくるので猫の数はどんどん増えていき、今の数になった。
親戚中で、異端者扱いされていると母さんは渋い顔で教えてくれた。
優しい人なのに。
おばあさんの入れてくれたお茶に口をつけながら、ふとそんなことを考えていた。
どこで買ってくるのか、古風なお茶受け菓子の味も好きだった。
私はお気に入りの黒猫を膝に乗せながら、おばあさんの話を聞いていた。
「わしがいなくなったら、どうするんな?」
と、唐突に近くにいた猫に言った。
それから、私の方を見た。
「わしも、もういつ向こうへ行っちまうかわからんでな。なああんた、そうなったら、この子たちの家探してくれんかえ?」
私はいきなりそんなことを言われて、驚いた。
「わしがいなくなったら、この家も壊されちまうで。可愛がってくれる人、探して。な?」
私は、おばあさんの言葉にただうなずいた。
おばあさんは、まだまだ長生きできそうなくらいに元気だったし、そんなの先のことだと思っていた。
しかし、おばあさんは知っていたのだ。
もう、自分の命が長くないことを。
一ヶ月後、おばあさんはゴミ屋敷でひっそりと亡くなった。
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筆者:さし 読者:239 評価:0 分岐:1