これまでのあらすじ
『私の声が届くまで』
この物語は 恋愛 です
先生や母さんは、内申書に響く、とよくいう。
その言葉に効率よく支配されている私は、今日も学校に通う。
学校は、私にとってただ耐えるだけの場所なのに。
全部捨ててしまいたいけど、母さんを裏切るような気がして、理由なく休むことはしなかった。
校門を抜けて、玄関で靴を履き替える。
薄汚れた階段を上っていくうちに、お腹がチクチクしはじめる。
口の中が乾いていく。
白い戸が見える。
その、教室の戸に手をかけるときはもう、前は向いていない。
何も見ないようにうつむく。
耐える一日が始まる。
自分の席にまっすぐ向かい、座る。
そうやって、ホームルームが始まるまでじっとしているのだ。
うつむいていても、視界の隅で話す何人かの女子を確認してしまう自分がいる。
かけがえのない友達、だった優子の姿がそこなあることに、私の心は痛んだ。
中学校に上がってすぐ、私は声を失った。
優子とは小学校からの仲良しだったのに、私が何も喋れなくなってから、少しずつ、本当に少しずつだけど離れていった。
話せない私より、ちゃんと話せる友達のほうが一緒にいて楽しい。一緒にいて、役立つ。
たぶん優子は、そう思ったのだ。
それでも優子を恨むことができないのは、私が優子の立場だったら、同じことをすると思ったからだ。
嫌いになれない。
また、昔みたいに気持ちを通わせたい。
それができないのは、優子と一緒にいる気性の激しい子が私を意識して避けているからだ。
あの子がいるから、私と優子は一緒にいられない。
私と優子は、意識してお互いに目を合わせないようにしていた。
そうすることが、精一杯の配慮だった。
机に突っ伏して、必死に時間が過ぎることを祈る。
今の私を創馬君が見たらどう思うだろう。
こんな姿、絶対に見せたくない。
創馬君を強く、意識してしまうのはどうしてだろう。
やっぱりそれは、惹かれているんだろう。
女の子の話し声、笑い声が耳につく。
それは私への当て付けみたいに楽しそうに。
私に背を向けている優子。
こんなみじめな私を見ないようにしてくれているんだろうか。
冷たいその背中が、ともかく今はありがたかった。
人って、どうしてこう変わってしまうんだろう。
重く冷たい時間が、ゆっくりと過ぎていく。
その言葉に効率よく支配されている私は、今日も学校に通う。
学校は、私にとってただ耐えるだけの場所なのに。
全部捨ててしまいたいけど、母さんを裏切るような気がして、理由なく休むことはしなかった。
校門を抜けて、玄関で靴を履き替える。
薄汚れた階段を上っていくうちに、お腹がチクチクしはじめる。
口の中が乾いていく。
白い戸が見える。
その、教室の戸に手をかけるときはもう、前は向いていない。
何も見ないようにうつむく。
耐える一日が始まる。
自分の席にまっすぐ向かい、座る。
そうやって、ホームルームが始まるまでじっとしているのだ。
うつむいていても、視界の隅で話す何人かの女子を確認してしまう自分がいる。
かけがえのない友達、だった優子の姿がそこなあることに、私の心は痛んだ。
中学校に上がってすぐ、私は声を失った。
優子とは小学校からの仲良しだったのに、私が何も喋れなくなってから、少しずつ、本当に少しずつだけど離れていった。
話せない私より、ちゃんと話せる友達のほうが一緒にいて楽しい。一緒にいて、役立つ。
たぶん優子は、そう思ったのだ。
それでも優子を恨むことができないのは、私が優子の立場だったら、同じことをすると思ったからだ。
嫌いになれない。
また、昔みたいに気持ちを通わせたい。
それができないのは、優子と一緒にいる気性の激しい子が私を意識して避けているからだ。
あの子がいるから、私と優子は一緒にいられない。
私と優子は、意識してお互いに目を合わせないようにしていた。
そうすることが、精一杯の配慮だった。
机に突っ伏して、必死に時間が過ぎることを祈る。
今の私を創馬君が見たらどう思うだろう。
こんな姿、絶対に見せたくない。
創馬君を強く、意識してしまうのはどうしてだろう。
やっぱりそれは、惹かれているんだろう。
女の子の話し声、笑い声が耳につく。
それは私への当て付けみたいに楽しそうに。
私に背を向けている優子。
こんなみじめな私を見ないようにしてくれているんだろうか。
冷たいその背中が、ともかく今はありがたかった。
人って、どうしてこう変わってしまうんだろう。
重く冷たい時間が、ゆっくりと過ぎていく。
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筆者:唐笠 読者:319 評価:0 分岐:1