これまでのあらすじ

『私の声が届くまで』
この物語は 恋愛 です
1章.私の声が届くまで読者596 評価2 分岐2
2章.声のない歌読者452 評価0 分岐1
3章.ごめん…… 読者421 評価0 分岐1
4章.手のひらに読者360 評価0 分岐1
5章.僕のために読者350 評価0 分岐1
6章.私の声、届くの?読者365 評価0 分岐1
7章.君の声読者325 評価0 分岐1
8章.たんぽぽ読者312 評価0 分岐1
9章.また会えたね読者312 評価0 分岐1
10章.ぽかぽか読者317 評価0 分岐1
11章.つめたい時間読者298 評価0 分岐1
12章.神様の差別読者319 評価0 分岐1
13章.気持ちの行き先読者350 評価0 分岐1
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さし
14.11.01
237
0
1
おばあさんの葬儀は、家族がいないということで細々と行われることになった。
母さんは、別に行かなくてもいいと言ったけれど、私はどうしても行くことを伝えた。
私に優しくしてくれたおばあさんには、どうしてもお別れを言わなくちゃ。

おばあさんの家は、やっぱり取り壊されることになった。取り壊すのにも、結構なお金がかかるらしい。
大人たちは、最後まで迷惑をかけてくれるな、とぼやいていた。
そんなこと、言わなくてもいいのに。
おばあさんの気持ち、一度でも考えたことあるの?
今思えば、おばあさんにとって私は娘のような存在だったのかもしれない。
おばあさんの心の支えに、少しでもなれたのかな。

それから数日して、私はまたゴミ屋敷に足を運んだ。
おばあさんがいない家。
猫たちは、相変わらず私にすり寄ってきた。
おばあさんの死も知らず、自分たちの家がなくなることも知らないのに。

私がここにきたのは、約束を守るためだ。
なかなか買ってもらえなかったスマートフォン。それが今、一番安いやつだけど、私のポケットにある。
もうメモやペンを持ち歩かなくていい。
だからといって、事態が好転するわけではないけれど。
すぐに文字が打てるツールを手に入れたのは、それが必要だったからだ。
私は、不思議そうな顔で私を見上げるクロの目をじっと見た。

おばあさん。こんな私に優しくしてくれたおばあさん。

約束、守るからね。

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筆者:さし  読者:257  評価:0  分岐:1

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