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『短編集』
この物語は 短編集 です
1章.短編集読者833 評価0 分岐18
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惑星収集家
15.02.07
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「「いただきまーす」」
声色が違う二つの声が重なる。
幼なじみの親友が隣に座るここは校舎の屋上だ。
緑のフェンスは若干錆かがり、今座っているコンクリートの床もだいぶ年季が入っている。
夕方の屋上は一面が夕日の赤や橙色で眩しく、風は温かかった。
その風にのって漂うのは二つの即席麺の入った発泡スチロールの器だ。

ーーねぇ、お腹すかない?
ーーそうだねぇ~、ちょっと小腹に入れたいとこだね…じゃ、〝アレ〟だ
ーーうん、〝アレ〟しかない
私と幼なじみの最近の定番であるものが最近できた。
名前を出さなくてもなんとなく伝わる。
私達は迷うことなく学校に併設されている購買部に向かった。
ーーあたしお湯貰ってくるよ、先いつもの場所行ってて
そう、幼なじみは私の分も持ち足早に給湯室に向かっていった。
私は向かう幼なじみの背中に返事を返し〝いつもの場所〟へ先に行く。

ドアを開ければ風が吹いていた。
時間は16時を回っており夕日が町中を照らしているようだ。
私は〝いつもの場所〟である屋上で私達がよく座っているフェンス近くの段差がある場所に座った。

ふっと、空を見上げて思った。
この町に生まれて17年以上生きてきたが、空の色や夕日の眩しさは変わらない。
確かに私は成長し姿や考え方、家族や友人や学校は変わるものも身近にある。
だが変わらないままのものも存在している。
それは幼なじみと私も同じだと気がついた。
彼女とは幼い頃、幼稚園時代からほぼ変わりなく共に過ごしてきた。
別段、一緒にいようと努力したつもりはない。
たぶん向こうも同じだろう。
自然に一緒にいることが多かった。
ただ、私は苦痛に感じたこともない。
一緒にいても気兼ねなくいやすい。
たぶん私と幼なじみはこれからもこの関係が続くだろう。
それが当たり前な気がする。
周りがどんなに変化しようとも、二人の関係はこのままだ。
まぁ、向こうがどう感じているかは分からないから未知数なのも事実だが。

ーーお待た~、はい作ってきたよ
いつの間にか幼なじみが両手にお湯の入った即席麺を持ち、満面に笑みで隣に座った。
ーーほい
ーーサンキュー、熱かったんじゃない?
ーーへーきへーき、あと1分ぐらいでできるよ。ちょー楽しみ
携帯を着ていたジャージのポッケからだしながら言う幼なじみ見てなんだか笑っていた。
ーーな、なにさいきなり笑って
ーーうーん
ーーうーん?
ーーいやさ、変わらないなって思ったんだよ
ーー何が?
ーーあんたのそーいうとことか色々
ーーはぁ?
ーー昔からいつもなんでも楽しそうにしてるとことか
ーーえぇ!?あたし脳天気っすか(笑)
ーーいやいや(笑)ただ分かりきってるのに毎回楽しそうにしてるじゃん、コレ食べるときも
そう言った私と幼なじみの手元には赤いきつねと緑のたぬきがある。
何度も食べた味、最近は本当にマメに食べている。
しかもお互い味は毎回変わらず、私は赤いきつねで幼なじみは緑のたぬきだ。
特に決めたわけじゃなくこうだった。
そう言い幼なじみを見ると向こうは得意げに返事した。
ーーそりゃー…美味しいじゃん緑のたぬき、それにさ___が美味しそうにお揚げ食べるの見てるとあたしも幸せになれそうな気がする
ーーなに、それ?
本当によく分からない答えだった。
けれど不思議と少し温かい気がした。
我ながら意味が分からない表現だ。
ーーあ!できたよ~、早く食べよ
弾んだ幼なじみの声に思考を遮られ、とりあえず私もふたごしから香る御出汁の香りに負けて返事し

「「いただきまーす」」
そして冒頭に戻る。


「あ!割り箸!!忘れてきちゃった」
「はい」
「えぇ!?凄い…ま、まさか割り箸常備とか?」
「な訳ないだろ(笑)購買部で買ってたときあんた緑のたぬき貰ったらそそくさ行っちゃったたんだもん」
「あは」
「まぁ、これも慣れだけどね」
長いつきあい、幼なじみのそそっかしいとこはよく分かっていた。
尻拭いまでいかないがなんとなく毎回、私がこういう役回りになっている。
たいして気にも止めず自分の分の割り箸を割っていると視線を感じた。
「…?、食べないの?」
「………___」
「うん?なんだよ見つめちゃって」
「いつも、あんがとね」
「!……なーに言ってんだよ」
「あは」
「……私こそ」
「なになに?」
「……早く食べよ」
「…うん、さぁ~かき揚げはあたし後乗せ派♪」



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