マンモス復活の夢

　蚊が吸った血から恐竜の遺伝子を取り出し恐竜を復元する･･･、
という衝撃的なアイディアで話題になった「ジュラシックパーク」。
ただし、
これは実際には不可能なフィクションである。
ところが、
この本のテーマであるマンモス復元の夢は著者によると十分実現可能なのだそうだ。

　著者は一九九〇年に、
牛の死んだ精子を卵子に授精し、
仔牛を誕生させることに成功した実績をもつ学者である。
そのかれがふとしたきっかけからマンモスにひかれ、
マンモス復元を夢見るようになる。
マンモスの死んだ精子を顕微受精という方法で象の卵子に受精させ、
できた胎児の卵子にまたマンモスの精子を受精させ…、
というふうに代を重ねていくとほぼマンモスに近い象が生まれるというわけだ。
しかし、
そのためには保存状態の良好なマンモスの氷づけ死体が必要になる。
そこで、
かれはマンモスを求めてシベリアへと飛びたつことになる。

　たしかにすごい夢ではあるが、
はたして人間がそんなことをしてもいいのだろうか、
という疑問もぬぐえない。
しかし、
夢を追う一方で、
大学をやめて現在は幼稚園の園長さんになった著者が、
幼い子供たちの前で楽しそうにマンモスの話をしているさまを思い浮かべると、
そのあたたかい人間性が感じられホッとした気持ちにさせられる。