片想い百人一首 (ちくま文庫) の感想
参照データ
タイトル | 片想い百人一首 (ちくま文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 安野 光雅 |
販売元 | 筑摩書房 |
JANコード | 9784480424020 |
カテゴリ | 古典 » 日本の古典 » 古代・中世文学 » 百人一首 |
購入者の感想
百人一首の全首について、新たな上の句を本歌の下の句に添えた作品をものし、それぞれにエッセイや、ときには挿し絵が添えられている。各首に対する濃度差は当然あるが、本歌取りも佳首がそろい、エッセイの内容も軽く飛ばすもの、重いテーマを扱うもの、どれも非常に読ませる。多くの古歌を引くがそのセレクションがまた良い。その一方、先の戦争での嫌な経験、それが風化し美化されることへの警戒感が如実に表れており、この書の通奏低音として全体を引き締めている。多彩な活動をされている安野氏にしてはじめて可能な作品である。ただひとつ気になったのは天皇皇族に対する敬語。天智天皇や後鳥羽上皇などでは特に気にせず、現・美智子皇后には敬語を用いる、それはいいとして「あらざらむ」の和泉式部の項など、帥宮などに対しては敬語を使い一般の人には使わないでおこうとするため、入り交じって佶屈とした印象がある。どちらかに統一するほうが良さそうに思える。なお、文庫版あとがきの「一瞬絶句」はまことに面白い。これだけでも価値があると思う。