これまでのあらすじ
『人外の森へようこそ』
『人外募集のしらせ』
?:(…………ここ)。
場所はここで合ってるのだろうか。
森だ。
見事なまでに森だ。
その森の前に佇む1人の女性。
瞳は淀み、光を閉ざしたその瞳には絶望の闇が指している。
?:(わたしは…………)。
…………大切な人を「失った」。
そもそも。
……人間と人外の恋なんて最初から上手くいくはず無かった……。
それでも愛してしまった。
あの嵐の日、私は見てしまった。
胸の奥のどうしようも無い思いは積もりに積もって遂に陸上の彼に会うため、自らの声を犠牲にし、激痛が走る足にムチを打ってまで彼を欲した。
しかし、それでもこの恋は実らない。
彼は私ではない……他の誰かを選んだ。
私ではない…………他の誰か。
この声も…………この足も…………全ては水の泡と成り果てた。
だから…………私にとっての「大切」は「失われてしまった」。
私にはもう何も残って無い。
そんな中見つけたのがこのチラシ。
…………ここならもう心が傷つくことは無いのだろうか。
そんな時だった。
ルーク:やぁ。人外の森へようこそ♪君は?
一人の青年から声をかけられた。
?:…………。
ルーク:?あれ?君、そのチラシを見てきたんだよね?
?:(コクリ)
ルーク:名前聞いていい?
なまえ…………。
あぁ、名前か。
私は訝しげに首を傾げる彼に向けて自分の名前を告げようとして………………口を閉じる。
代わりにポケットからメモ帳を取り出すし、持っていたペンで自分の名前を書いて見せた。
ルーク:なになに?「セレナ・ユーリアス」?それが君の名前?
私は小さく頷いて、紙を一枚捲る。
『私、声を出せないんです。』
また1枚捲る。
『ごめんなさい。迷惑なら帰ります。』
その言葉を最後にクルリと背を向けようとしたまさにその時だった。
ルーク:いやいや、何言ってるのさ。迷惑だなんて一言も言ってないでしょ?
セレナ:『でも……私喋れない。』
ルーク:そんなのは関係ないよ。そもそも、そんなこの世の終わりみたいな顔をしてる君をはい、そうですかと二つ返事で追い返す程僕は腐ってるつもりは無い。
そして、彼はこう続けた。
ルーク:あとは君次第だ。君はどうしたい?…………なにか辛いことがあったんだろうけど、そんな思いつめたように目の下を隈だらけにしておくと、折角の綺麗な顔が台無しだよ?だから、どう?想い人を忘れろとは言わないからさ、君は君で幸せになるべきじゃない?
セレナ:『なんで』…………(ペラッ)『私に想い人がいたってことを知ってるの?』
ルーク:誰でもわかるよ。それ位どんよりとしてたってこと。と言うか、全部顔に出てた。
あぁ……そうなのか。
私はやっぱり忘れられないのか。
姉さん達からはもう忘れろと言われていたけど……。
でも…………それが枷となってしまっているなら…………忘れられる方がいいのかもしれない。
もう1度、私は…………。
セレナ:『こんな私でもいいんですか?』……(ペラッ)……『ここにいても』
すると、目の前の彼は満面の笑みを見せた。
ルーク:もちろんだよ♪大歓迎♪
その笑顔がすごく眩しかった。
心から重りがボロボロと崩れ落ちていく……。
そんな感覚。
久しく忘れかけていた……「嬉しさ」がこみ上げてくる。
私は目頭にこみ上げてきた熱いものを腕で拭うと震える手で心に渦巻く全ての感情をこの一言に込めた。
セレナ:『ありがとう』
そして、私は次にこう聞いた?
セレナ:『そうだ』……(ペラッ)……『この森に泉とかの水辺ってありますか?』
ルーク:うん。あるけど…………どうして?
セレナ:『私、ローレライなので』
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筆者:ハルキ 読者:230 評価:0 分岐:1