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『短編集』
この物語は 短編集 です
1章.短編集読者833 評価0 分岐18
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惑星収集家
15.02.04
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「ただいま…」
2月の真夜中の人気のない部屋は静まりかえり、空気は外気よりもなぜか寒く感じた。
電気を点け持ち物を降ろした。
そして仕事を終え帰宅したあたしは最初にやることと言えば同居人に一声かけることだ。
「にゃー」
同居人は閉めきっていたドアがわりの障子をあければ目の前まできていた。
見た目に対して高い声で返事なのか、そうじゃないのか判らないが一声返してきた。
同居人は赤毛虎の雄猫だ。
橙色の目がじいと此方を見つめている。
あたしはそいつを抱き上げ頬刷りしながらストーブの電源を押し、温風があたる近くを陣取る。
腕の中の同居人は目を細めて大人しくしている。

一息つき、あれこれ身の回りの整理をすませると、あたしは最終永住地に辿り着く。
「はぁ~~…」
整理をすませる前に予め点けておいた電源のおかげで永住地、こたつは十分に温まっていた。
この温もりに捕まれば最後、中々に脱出は難しいのだ。
そもそも抜け出す理由を見つけても出て行くつもりはない。
こたつの机面に乗せていたマグカップに口をつけ、優しい甘さのミルクティーを飲めば体に染み渡る。

ぼんやり体を寝そべらせ力を抜けば今日も無事に終わったと実感した。
見上げた天井も寝そべっているこたつ用のマットの柄も昨日と同じだ。
毎日同じ事の繰り返しだ。
同じ時間に出勤し帰宅し、家事や余力があれば趣味をし、時間が来れば眠る。
作業のような日々だと思った。
我ながらよく続いているものだとも思う。

「…にゃ-、んにゃー」
寝っ転がるあたしに同居人が声をかけてきた。
頭だけずらしそいつの名前を呼ぶと、また橙色と視線が合う。
人目見つめ合うと同居人は軽やかに身を翻し鳴きながら自分の寝床に向かう。
同居人が何をしてほしいのかすぐ分かった。
彼とはまた日が浅く、比較的に人懐っこい様だが未だに警戒される。
その割には声をかけ、構うと喜ぶ。
自分からよるよりもこちらにきてほしいらしい。
同居人は可愛いと思う反面、正直面倒だった。
だが外に居たのを同居人にした責任はこちらにある。
それに苦痛ばかりではなく、確かな愛情も持っているつもりだ。
あたしは同居人をまた抱き上げこたつまで移動しこたつ布団越しに膝上に乗せた。
「~~~~…」
同居人は満足したのかあたしの頬を舐めた。


四角い部屋に女一人と雄猫一匹、あとこたつ。
同じ事を繰り返し退屈そうな毎日だ。
けれどもあたしはそんな変わらない毎日や手のかかる同居人を少なからず嫌いではない。
平穏な時間は有限だと思う。
良い意味でも悪い意味でも変化は大切なのは分かる。
だが向かう先があり帰る場所があり、帰りを待っている存在がある今が愛おしい。
そんなことを考えた早朝だった。

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