朝青龍さえ寄り切る剛腕。すっきりと筋を通す人。

内館牧子がここ10年ほどの間にさまざまな媒体に書いたエッセイをまとめた一冊。

横綱審議会委員（2000~10年）だった時期のものもふくまれているので、
大相撲関係の文章も多い。

格闘家としての朝青龍の比類なき強さを認めつつも、
横綱の品格を欠く未熟な言動には徹底的な批判を加える。

大阪府知事太田房江が大阪府知事賞を土俵上で授与したいと表明したのに対し、
日本相撲協会が拒否したことを支持し、
「神事としての大相撲」の研究のために東北大学大学院に入学する。
学位論文「大相撲の宗教学的考察ー土俵という聖域」で修士号を取得。

請われて東北大学相撲部監督に就任すれば「立ち合いにするどく当たっていくこと」だけを言いつづけ、
わずか半年でCクラス優勝の部にする（大学相撲は、
ABCの三段階にランク分けされている）。

いうこと、
やることに筋が通っている。

朝青龍が突然引退した直接の原因は暴力沙汰かなにかだろうが、
「横綱失格」という内館牧子審議委員による一貫した批判が寄り切ったものと私には見える。

その同じ論理で、
大相撲引退後プロレスに転向して負けつづけ「横綱会から除名せよ」という声があがった曙については、
木村庄之助の薫陶を受けた立派な横綱だったことを理由に除名に反対する。

こういう人を、
ほんとうに保守的な言論人というんだろうな。
立派です。