台湾―四百年の歴史と展望 (中公新書) の感想

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タイトル台湾―四百年の歴史と展望 (中公新書)
発売日販売日未定
製作者伊藤 潔
販売元中央公論社
JANコード9784121011442
カテゴリ歴史・地理 » 世界史 » アジア史 » その他

購入者の感想

「台湾、不憫だよなあ…」
ある酒場で隣のおじさんがポツリとつぶやいた言葉が、10年経つ今も忘れられない。台湾のポップカルチャーに夢中で、金城武だのF4だのには詳しかったが、歴史のことは何となく現代史を少し知っている程度の僕だった。
よし、ちゃんと台湾の歴史を知ろう、と重い腰を上げた。
本書は、16世紀中ごろ大航海時代のポルトガル人が「イル・フォルモサ(麗しの島)」と台湾を“発見”してから、20世紀末の李登輝の時代に至るまでの400年以上の歴史を、駆け足だが実に要領を得た文章で紹介している。
いくつも発見があったが、まず僕が驚いたのは、台湾に「台湾民主国」という独立時代があったこと。清から日本へ割譲される前の、ほんの短い期間ではあるけれど、「アジア最初の共和国が、ここに誕生した。ただし、諸外国の承認を得られぬまま日本の進撃により、ほどなくして消えたのである」(P69)
日本による統治についても、あらためて考えさせられた。「植民地経営は人類愛にもとづく『慈善事業』ではない。軍事力という物理的な措置で領土を獲得すれば、当然に武力による抵抗を招く。(中略)抵抗が激しいほど弾圧も強化されて行く」(P86)
もちろん多くの血がそこで流れたわけで、そのことを忘れて僕たちは過去を美化し過ぎてはいけないのだが、著者はまた「植民地支配を肯定するものではない」と断った上で、こうも書く。「植民地下の近代化、わけても教育の充実がなければ、一九七〇年代以降の台湾経済の飛躍的な発展はなく、いま少し先のことになっていたと思われる」(P117)
だから、のちに国民党がやって来たとき、「法治国家の市民に成長していた台湾人の目には、『祖国』の官吏の公私混同と腐敗ぶりは、これまた驚嘆すべきものに映った」(P141)
その国民党による台湾人の虐殺と粛清に関する記録は、読んでいて感情が高ぶる。「殺戮には機関銃が使用されたほか、鼻や耳を削ぎ落とした上に、掌に針金を通して数人一組に繋いだり、麻袋に詰めて海や川に投げ捨てるなど、極めて残虐なものであった」(P154)
台湾の歴史は、外来政権による抑圧と住民の抵抗の連続だが、国民党による支配も例外ではなかった。いや、とりわけひどかったことがよくわかる。

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