ピアニストだって冒険する の感想
参照データ
タイトル | ピアニストだって冒険する |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 中村 紘子 |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784103510512 |
カテゴリ | エンターテイメント » 音楽 » クラシック » 演奏家・指揮者・楽器 |
購入者の感想
中村紘子さんの著作はすべて読んできましたが、この最後のエッセイ集は彼女に影響を与え、共に歩みながら先に旅立たれた方たちとのエピソードが数多く織り込まれている。彼女の病状そして逝去を知ったうえで読んだせいかもしれないが。何となく先に旅立たれた方たちに近々、また一緒に音楽について語らい楽しみましょうと挨拶しているような気がしてならない。15年前まだ大学生のころサントリーホールの学生席で彼女のリサイタルを聞いて以来、毎年一度は聴きに行くことにしていたため恒例行事が無くなってしまった寂しさを感じますが、この本を読むと彼女のユーモアと勝気さが蘇ってきます。45周年の記念リサイタルでは30分以上、5曲ものアンコールに応え最後には「ごきげんよう」と笑顔で言っているようなショパンの別れの曲を弾いて聴衆を大満足させ、またある時の地方公演では、主催者側のドタバタで開演が遅れてしまい彼女の登場と同時に発せられた「遅れたことを謝れ!」との酔っ払いのヤジにキッと見やり「わたくしのせいではありません!」とピシャリと応えてから中央に立ち笑顔でゆったりとお辞儀をし、何事もなかったかのように演奏を開始した姿を思い出しました。確かに、フォルテは濁ることもあるし、ルバートも独特な演奏も多かったですが、それを打ち消して余りある魅力的な、そして彼女がホロヴィッツをデモーニッシュと評したように彼女自身のデモーニッシュな演奏が再び生で聴けないことが残念です。