悪の華 (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトル悪の華 (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者ボードレール
販売元新潮社
JANコード9784102174036
カテゴリ文学・評論 » 詩歌 » 詩集 » 近代詩

購入者の感想

"レスボスよ、暑くものうい夜の世界よ、眼のふちの黒い乙女ら、鏡の前に、仇花のわれとわが肉体恋うて、妙齢の熟れた果実を愛撫する"1857年発刊の本書は、詩の文学空間としての可能性を最も早く提示し象徴派詩人に大きな影響を与え『近代詩の父』として知られる著者、20年間の創作が凝縮された珠玉にして唯一の一冊。

個人的には、思春期には多少拗らせ的に。そして現在は自身の運営するスペースでの音読会主宰として。長く詩がもつ【表現としての可能性】を支持している事から、久しぶりに本書を手にとりました。

さて、そんな本書には著者の20歳から40歳までの徹底した20年間の創作を経た162の詩篇、当時において反道徳的であるとして、有罪・罰金処分を受けて削除された6編も含めて収録されているわけですが。"これらの病める花々を捧げる"と冒頭にあるように、韻文詩として展開される世界の多くは退廃的、官能的で【普段とは違う異世界に誘われます】

また、その一方で。合間でのリューベンスやレンブラントといった芸術家たちの名前が出てくる詩(灯台)や、猫へ向けられた愛情が感じられる詩(猫)からは美術評論家としても知られた【著者の人間性が感じられ】どこか安堵させられます。

言語のもつ【音楽的・映像的な側面に着目し、イメージの世界を表現しようとした】象徴派詩人に関心ある誰か。あるいは、自由にページをめくって楽しめる本を探す人にもオススメ。

 
 ボードレールは、詩人であると同時に、
 文芸批評・美術批評・音楽批評等も行った批評家でもある。
 この詩人は、芸術・文学を知り尽くしていたのである。
 『「芸術」は長く「時」は短い。』(「不運」より P50)

 この詩人から、「悪の華」という一つの爆弾が放たれ、
 ここから、近代詩(象徴詩)が始まる。
 ――ヴェルレーヌ・ランボー・マラルメ・ヴァレリー…――

 翻訳者は文化勲章受章者である堀口大學。
 翻訳は、芸術的な意匠のようなものであると思う。
 ボードレールと堀口大學の芸術的合一。

 暗黒内界の吐露!
 ――背徳・魔性・退廃・反逆・官能・甘美――
 あらゆる形容が混沌となり、
 私の中で弾け飛んだ。

 必ずしも晦渋ではないと思う。
 再読を繰り返すうちに、
 その言の葉は血肉化され、
 芸術的理解に到達するものと思われる。
 

堀口大學の翻訳作品中、特に出色の作品である。ボードレールの原詩を素材に、斯くまで美しき詩集を作り上げた堀口の天才には脱帽する。当然、「意訳の芸術」であって、ボードレールの意思をそのまま反映した「芸術の直訳」ではない。ボードレールの原詩そのものを味わいたい人は、直接フランス語で読まれるべきであろう(大体、フランス語を韻律と雰囲気を「正しく和訳」することには無理がある)。

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