証言 班目春樹―原子力安全委員会は何を間違えたのか? の感想
参照データ
タイトル | 証言 班目春樹―原子力安全委員会は何を間違えたのか? |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 班目 春樹 |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784103331513 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論 |
購入者の感想
本書を読んで、確かに班目春樹氏の自己弁護はやや鼻につくし、菅直人元首相に対する批判には感情的などぎつさを感じましたが、それらは本書の表層的なテーマでしかない。本書が提示するもっと本質的な問題は、中央官僚がいかに日本という国家を蝕んでいるのかということです。3月11日のあの国家の非常事態に、班目氏が総理官邸に行ってみると、本来、原発事故の収束に向けて陣頭指揮を執るべき原子力保安院の院長(=経産官僚)は、とっとと、官邸から逃げ出した後で、単なるアドバイサー役に過ぎなかった、班目氏に急遽そのおはちが回ってきたところから、事故を巡る迷走が始まります。その後、原発の詳細な地図もないまま、手探りで事故への対応にあたるわけですが、この間、原子力保安院は現地情報をほとんど挙げてこない。その真意は不明ですが、要するに原発事故対応のようなババを引きたくないというのが、経産省の真意だったのではないでしょうか。にもかかわらず、事故収束後には火事場泥棒さながらに、自分たちの利権を焼け太りさせ、現在の原子力規制委員会を自らの影響下に残すことに成功しています。日本の戦後最大の危機には全く対応しなかったのに、その状況下で自省の権益は最大限に獲得することには血眼になる。事故に際して全く役に立たなかった「スピーディー」を原子力安全委員会の管理下に押しつけた文科省も同じ穴の狢です。問題解決能力はないくせに、自省の権益だけは奪い合う。省益あって国益なし。結局、原発事故以外の問題でもこうしたことが続いているというのが、現在の日本の衰退を招いているのではないでしょうか。
班目が悪い、菅が悪い、いや東電が悪い、そういう批判が声高に叫ばれていますが、なぜ、誰も経産省の責任論を本気で論じないのか。多分そこにはマスコミを巧みに操った霞が関の情報操作があったのでしょう。真犯人はいつも、いつも事件の影で笑っている。そんなことを気づかせてくれる一冊でした。
班目が悪い、菅が悪い、いや東電が悪い、そういう批判が声高に叫ばれていますが、なぜ、誰も経産省の責任論を本気で論じないのか。多分そこにはマスコミを巧みに操った霞が関の情報操作があったのでしょう。真犯人はいつも、いつも事件の影で笑っている。そんなことを気づかせてくれる一冊でした。