これまでのあらすじ

『自称:普通の男子高校生が閻魔様と異世界生活』
1章.自称:普通の男子高校生が閻魔様と異世界生活読者480 評価0 分岐1
2章.記憶喪失?死?なんでもこいや!!読者210 評価4 分岐1
3章.地獄の業火とか終盤に覚えそうな名前と、見た目に違わぬ派手な技なのにもう使えてる閻魔様マジパネェっス読者138 評価0 分岐1
4章.普通の人の新たな仲間は異常な人読者211 評価10 分岐1
5章.小さな防具屋さん読者115 評価0 分岐1
6章.緑髪の幼き狩人読者94 評価2 分岐1
著者
投稿
読者
評価
分岐
スケマグ
17.12.19
117
2
1
勝負を受けてもらい、正直ホッとしていた。
コチラに向かってくる巨体に見合う程の歩幅…恐らく逃げても高確率で追いつかれることになる。となると、逃げて背後から戦闘になるよりも迎え撃った方が隙が少なく相手に対応しやすい。隙を見て逃げる手もあるしな。
彼奴の戦闘能力は経験がないから未知数。この少女や尊曰くヤバいらしいが…それ故、戦闘ができる者が1人でも多い方が助かる。
それにだ。逃げてネシスに入ったとして、コイツが追いかけてきたら、エリちゃんや武器屋の主人、ギルドのお姉さん…多くの人の命が危険に晒される事になる。


……というか、何か知らんが心の奥底でアイツを倒せるという自信に満ち溢れ、ワクワクしている自分がいる…其奴が身体を逃げに転じさせない。生前の俺は戦闘狂か何かだったのだろうか?

そんなことを考えていると、少女が先手を繰り出した。


「先手は必勝!『ペネトショット』!!」


速攻で矢を番え放つ少女。俺に余裕はないが、 少し様子を見る事にした。
矢は、大きな槍の様なオーラを纏い一直線にゴブリンジェネラルの元へと向かう


カンッ!


しかし矢は彼奴の胸に当たると、刺さることなく跳ね返されて地に突き刺さった
彼奴は勢いを緩めずコチラに向かってくる…





「あ、あのー…私達って何すれば…」


そんな時、劫華がソワソワした様子でコチラに問いかけてきた。
尊はというと、背後から劫華の首を見つめて「ぐへへへ」と小さく笑っている。さっきの怯えはどこへやら…危機感がまるで無い。


「劫華は今は手を出さなくていい。尊は劫華の護衛を。」

「…了解よ。」
「はーい、了解です!」

「ああ…あと、二人とも…危なくなったら、村に逃げて助けを呼んでくれ。頼んだぞ。」


二人に背を向ける様にして立ち塞がると少女がムゥ…と、苦い顔をしていた


「……やっぱりダメね…

……だったら、最大火力で行くわよ!!」


ドスン!…ギギギギ…


小型弓をしまい、一番大きな弓を地面に深々と突き刺して、成人男性の脚はあろう太さと大きさの鉄の矢を番える。
この子こんなの背負ってたのか…重いだろうに。


「くっ…ぅぅぅぅ!!!」


弓を両足で踏みつけるように蹴りながら、弦を持ち上げるようにして大矢を引き絞る


「く…らえぇぇええ!!!







『射手座の天弓(サジタリーバスター)』ッ!!!!」



今度はさっきとは桁違いに大きな弓。生身の人間なら当たれば消し飛ぶだろう程のとてつもないオーラの大きさ。掠った木が折れる程の威力だ。


[!!]


彼奴の目が大きくなり、大剣を両手持ちで振り上げて立ち止まった。
大きく腹を見せた彼奴を見て、ニヤリと笑った少女が勝ち誇ったようにコチラを見た


「勝負ありね!!」

「…。(これで…勝負に敗けたが、戦いに勝て……











…いや待て…アイツ、まさかコレを…!?)」


ズパン!


……嫌な予感程的中する。
彼奴は大剣を勢い良く振り下ろし、軽々とあの矢を叩き斬るはおろか、軽い地震と剣先からコッチに届かんばかりの地面の亀裂が起こった。
これには、少女は顔を青ざめざる負えなかった


「え…?
……師匠の技でも…ダメだっていうの……?


…や、やっぱり逃げましょ…?これはちょっとヤバいって…」

「(…まだ終わってないか…にしても、あの反応…小さい矢の時とは明らかに違った。まぁ、大きさもあるんだろうが…それ以上に、アイツ自身あの攻撃は危ないと感じ取ったんだろう。そう感じなかったらずっと進みながら弾いて今頃此処に着いて斬っているはずだ。




…つまり、あれ程の威力があればアイツを倒せるかもしれないということ。俺は素手…いけるか…?














…いや、いけるいけないじゃねぇ…やるんだ。)

…逃げたきゃどうぞ。ネシスに行けば守ってくれる奴がいるかもしれない」

「逃げたきゃって…アンタ逃げないの!?」


信じられない!と言わんばかりに目を見開いて俺を見つめる少女。俺はそれに応える。


「ああ。逃げないさ。」

「バカじゃないの!?」

「逃げるヘタレよりかはマシだな。」

「アンタ正真正銘のバカね!!死ぬのよ!?恐くないの!?」


今は自信や勇気が満ち溢れているから分からないが、もしかしたら本来なら恐がっているのかもしれない。


でも…

「俺が死ぬって誰が決めた?」


強い敵と戦うから死ぬ?最弱職だから死ぬ?レベル1だから死ぬ?





否。それは死ぬ理由にはならない





「俺の死は俺が決めるんだ。お前や他の誰に決めてもらうことじゃない。

…見てろ。お前がバカにした不痛 之仁(普通の人)を!」


自信と勇気からか力が湧き上がってくる…無限に、限りなく…高く、強く!!

前を見ると、いつの間にか彼奴は大剣を振り下していた
思ったよりも横に太い剣…これは斬るより、叩き潰されるが正しいか。


「…いや。止めて…」


恐怖でポロポロと涙の粒を零しながら、大剣を見ている少女…腰を抜かしたのか、ペタリと地面に座り込んだ
俺は拳をめいいっぱい握り、剣を壊してやらんとすると、後ろから一つの影が出てきた




『そうはさせませんよ…!』


ガキィン!!!


颯爽と現れ、手にした大剣で斬り上げて彼奴の大剣を止めた一人のパラディン


「ッ…中々重たいですねぇ!」


カタカタカタ…


そう。そのパラディンとは、後ろで劫華の護衛をしていたはずの尊である。
彼奴と競り合う状況に持ち込むが、位置的や体格的に有利な向こうが若干押している状態だ。


「尊…劫華の護衛をと言ったはずだろ?」

「私には!泣いてる人がいるのに助けないなんて…そんな恥ずかしい真似は死んでもできませんッ!!!」

「…そうか。(…いざって時は頼りになるな…)」


ギィン!!


[!]


尊が押し上げると大剣は押し返され、彼奴は体勢を崩した。


「いきますよ!!」


そこに飛び上がって近付き、袈裟斬りの用量で豪快に斬りつける尊

が、思ったよりも彼奴の皮膚は硬く、斬れずに終わる…











…いや、違う。


「まだまだぁ!!」


当たった剣の反動で更に高く跳び上がり、縦に回転しながら重力で加速し彼奴の肩を目掛けて大剣振り下ろす


「『裂空斬』ッ!!」


ズバッ!!


肩から胸にかけて大きく切り裂くと同時に噴き出す鮮血、後ろに後ずさって膝を付いた彼奴


「はぁ…はぁ……どうです?少しは効きましたか?」


尊が肩で息をしながら大剣を構えてそう呟く


[…。]


倒れないところをみると、まだ彼奴は生きている。アレをくらってまだ生きているとは…もの凄いタフだな。流石は将軍と言われることはある。
…だが明らかにダメージはあったようだ


カランカラン!


突然、金属の甲高い音が聞こえてきた。
音の方をみると、尊が大剣を落としていた。
手が滑ったのかと思っていたが、そうじゃないと直ぐに分かった。
あんな重そうな大剣で彼奴の一撃を受け止め、大技を放ったから手に限界がきたんだ。その証拠に、手がガクガクと震えていた


「あ…あれ?手が動かない…?」


震える手を見つめて動かない尊


[……]


そうしている間に、ムクリと起き上がる彼奴


[ウォォォォォオオオオオオ!!!!]


雄叫びをあげ、怒り心頭の彼奴。血走った目はコチラを見つめていた














『地獄の業火』

後ろから、あの技名が聞こえてくる…思えば初めから撃ってもらえばよかったかもしれない。まぁ、そうなれば勝負は無くなるんだがな…


パンッ!


地面を叩く音……奴を倒せるか!?




……………


「…アレ?」


拍子抜けした劫華の声が聞こえてきた。
考えられるのは一つ。


魔力不足だ。


あんな凄い魔法みたいなの撃ってからろくに休んでないから、仕方ないと言えば仕方ないが…尊と違い、いざって時に使えないな。やはり使閻魔か。
地獄の業火は1回きりの大技と覚えておくか…


「劫華。尊と緑髪を下げてくれ。」


とりあえず、問題なく動けそうなので指示を出す


「…分かったわ。強化だけはしとくわね!

『閻魔の加護』!」


大技は撃てなくても補助と仲間の救助は出来るのか…少しだけ使閻魔に格上げしとこう。

暖かで優しい炎のオーラが俺を包み込むと、更に高まる力…自分は彼奴よりも大きな存在だと錯覚する





ふと前をみると、彼奴は目の前に居て大剣を振り上げて、コチラを両断しようとしていた。


「しまっ…!之仁!なんとかして!!」

「くっ…手が動けば…!」

「は、ハハ…結局、どう足掻いてもこんな化け物には勝てないのよ…」


助けを求める劫華、悔しそうに嘆く尊、絶望で笑うしかなくなった少女…

劫華が少女を、俺が尊を助けているのでは振り下ろしに間に合わない。
大剣を破壊したとして、次の手で腕を振り下ろされたら俺には届かないにしても、三人は助からない……


今の俺にあるのは、自分でも計り知れない程のパワーのみ。








ならば、やれることは一つ。


「行くぞ化け物!普通の人を舐めんなよ!!」


地面を蹴ると、自分でも驚く程速く彼奴の腹部に近づけた。
その速さに、彼奴も予想していなかったのだろう。少したじろいで、振り下ろすのを止めた。チャンスだ!


「くらいやがれ!!







『不痛ノ拳』!!!!」


持てる力、全てを拳に込め殴りつけた



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!











































































俺の放った一撃は有り得ない程の轟音を発し、彼奴の腹を突き破り、その衝撃波は背後にある木々をなぎ倒し地面を抉っていた
肝心の彼奴はというと、ぐらりと揺れて後ろへ倒れた
そして鳴り響くレベルアップした様な音と勝利のファンファーレ


「…うわっ……すっご…」

「…つ、ツレ君……何処にそんな力が…?」

「………アレ?生きてる…?ッ!!あ、アンタ…その化け物を!?」

「………フッ…」


唖然と俺を見つめる三人。それぞれが感嘆の声を漏らす


「…フフフ…











………な、なんじゃこりゃあぁ!!?」


クールに〆ようと思ったが、流石に無理だ。驚かずにはいられない
もっとミシミシとくい込むなら分かるが、こんなに威力あるとは…何?これって俺TUEEEE!!!ってやつか!?そんなにステータスヤバいのか!?


「す、凄いわ…」


少女が目を輝かせながら呟く
そうそう。ゴミじゃないってようやく分かったか


『あなたの強化!!』


………ん?強化?
嫌な予感しかしないので少女を見ると、劫華のことをあの目で見つめていた


「え…え?私の強化?」

「そうよ!あなたの強化!アレが無ければあんな化け物倒せなかったわよ!絶対!!

…ねぇ!私と組まない?いえ、組ませて下さいお願いします!」


平身低頭でペコペコ頭を下げてお願いする少女…


「え…えーと…その…」チラッ


助けを求める様にコチラを見る劫華。
だが、俺は知らんぷりをする。何故って?倒した俺を褒めてくれないからだ。




…拗ねてないし。


「…私は之仁達と一緒に行くから、組む目的なら私達のパーティーに入ってくれない?仲間は多い方がいいし。」

「いいわ!パーティーに入ってあげる!!」


勝手にパーティーに入るとか言ってるし…しかも上から目線


「えーと…いいわよね?之仁、尊?」


劫華が首をコテンと傾げた


「ええ!勿論ですよ!」


にっこりと笑う尊


「……勝手にしろ。」


拗ねてないもん。ちょっとだけムカッときただけだもん。


「あ、そう言えば名前言ってなかったわよね?

アタシは『ティアス』!よろしく!劫華に尊に之仁!」


このマリモみたいな緑髪の少女はティアスというらしい。
コレはただの予想だが、コイツは結構長くこのパーティーにいるだろう…俺の第六感がそう言っている


「よろしくね!」
「よろしくお願いします!」
「……よろしく。」


二人とは対照的に、嫌々ムードを醸し出しながら言葉を放った


「まぁ、知ってると思うけど、アタシ弓使いで、中衛が得意だからそこらへんで戦うわ」

「ちょっと待て。」


異議あり!
中衛は俺の場所だと思ったが、コイツそれを奪いに来やがった!


「普通、弓なら遠距離だから後衛だろ。

それに、中衛は俺のポジション(の予定)だからな。」

「アタシの弓見てみなさい。狙撃じゃなくて機動性に重きを置いてるの。だから後衛だと威力落ちるし、何より外すわ。」

「ハッ。外すのはお前の力量不足だろ。威力も急所狙えばいい」

「アアン!?扱ったことのない普通の人の分際がよく言うわね!!
だったら、どちらが中衛に相応しいか勝負よ!」

「上等だ!やってやるよ!」

「まあまあ落ちついてー。暗くなってきましたし、帰りましょう?」


ニコッと笑う尊が仲裁し、一時的にいがみ合うのを止めて空を見ると、夕方から夜へと差し掛かっていた


「さあさあ!ネシスに帰りましょー!」


尊が先頭で手をあげながら来た道を進んで行き、ティアスと俺はその後に続きながらまたいがみ合った。
























「(……ティアスは私のおかげで倒せたと言ったけど、私がしたのはどちらかというと、死なない為の防御の強化だった…

…之仁…異常な力といい回復力といい、あの子本当に何者なのかしら…?普通に人間を超えてる様な…)……あれ?皆何処へ…?
…これって、置いてかれたってことよね…?







待ってぇー!!置いてかないでぇー!!」


慌てた様子で三人を追いかけて行った劫華。







劫華が走り去った後、現場に降り立った一人の青年


「……間違いない…あの人が俺の主となる人…!!」


之仁の一撃の痕跡を見て、そう呟いた青年は木へと飛び移ると、風のように音もなく木々を渡り歩いて、コッソリと之仁達を追っていった

続きを選択して下さい

筆者:スケマグ  読者:19  評価:0  分岐:0

物語の続きを書く

このストーリーの評価

スケマグ #0 - 17.12.20
「之仁。使えんまって何?」

「え?えーと…
…すっごい頼りになる(わけでもなく)、使える(とは限らない)閻魔様って事だな。」

「!…まぁ、当然よね!私だもの♪」フフン



こんな駄文をいつも読んでくださるとは…感謝感激です!ありがとうございます( *´︶`*)
最近忙しく、1週〜1ヶ月に一、二本という不定期ではございますが、頑張って書いていきますので何卒よろしくお願いしますm(_ _)m

サム #0 - 17.12.19
すごく面白い☆
使えんま(笑)
いつもこっそり読ませていただいています。これからも頑張ってください!

物語の感想を書く

訪問有難うございます

リレー小説

みんなのコミュニティ

アーカイブス


» 過去ログ
スケマグ さんが投稿した リレー小説 「 不痛の一撃 」勝負を受けてもらい、正直ホッとしていた。コチラに向かってくる巨体に見合う程の歩幅…恐らく逃げても高確率で追いつかれることになる。となると、逃げて背後から戦闘になるよりも迎え撃った方が隙…
2017 - copyright© みんこみゅ - リレー小説 all rights reserved.