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東方想馬灯~Memory~

あんず #105 - 16.01.24 19:00
舞ちゃんと乃ノ佳ちゃん、生前の物語。
2人が秘密の花園で出会うところから始まるこの物語、終わりはとても残酷―――
オリキャラ設定、チート(?)、過去編が大丈夫な方は・・・
ゆっくりしていってね!!

この記事のまとめ

浜名 舞(エル)
 恋と命を操る程度の能力
乃ノ佳
 他人(ひと)の記憶を見透かす程度の能力

これが終わり次第原作の小説を書いていきます
観覧者数200人突破!!
よければ約束のミサンガも~・・・
ゆっくり見ていってね(≧ω≦)

乃ノ佳がエルを家まで送って帰宅!←いまココ

レスポンス


あんず #269 - 16.07.13 20:16
「・・・」パチッ
珍しく、夜中に目が覚めた。
壁にかかった埃まみれの時計をふと見ると、もはや夜中の1時をまわっている。
外が、騒がしい。
人々の叫ぶ声。
ちりちりと何かが弾ける音。
割れそうな窓から差し込む、オレンジ色の光―――
「・・・乃ノ佳」
ふと心配になった、先程まで一緒にいた彼女。
お母さんも居ない。外は相変わらず五月蝿く、耳障り。
「行か、なきゃ。2人を、探しに」
クローゼットの下に乱暴に置かれたパーカーを羽織り、松葉杖を使って外へと急いだ。


あんず #202 - 16.05.22 19:35
〔ほら・・・〕
「・・・ひっ!」
呆然としている内に、男が目の前まで迫っていた。
急いで立ち上がり、立て付けの悪い玄関を必死に開けようとする。
中々、開かない。
(お願い・・・開いて・・・急いで、逃げないと!)
勢いよく体当たりすると、ほんの少しだけ開いた。
その隙間からするりと外に逃げ出す。街灯も無く、ここらは真っ暗だ。
ヒールのある靴を乱暴に脱ぎ捨て、砂利道を駆ける。
あの男の声が遠くで聞こえたが、それも無視して無我夢中で走った。


あんず #159 - 16.04.01 19:49
「あ・・・いやあああああああああ!!」
視界が涙でにじみ、髪飾りが歪む。着ていたドレスにその液体と涙が染みていく。
〔あいつは邪魔なんだよ・・・乃ノ佳とお父さんの生活には〕
「黙れ・・・お前なんか父親じゃない!!」
私のため。私のため。そう言われ続けて。どうせ・・・見えるのは私じゃなくて、「乃ノ佳」なんでしょ?
「私」を愛してくれなかった。「私」を見てほしかった。
この男は、何一つしてくれなかった―――
〔ほら・・・来なさい乃ノ佳、お父さんがお前を愛していればあいつはいらないんだろう〕
―――何度、私を汚すのだろう。もう、体も穢らわしいものになってしまった。何回も泣いて、悩んで、その度手首を切った。タヒにたかった。終わらせてしまいたかったのに―――


あんず #159 - 16.03.31 21:36
〔・・・遅かったな乃ノ佳。どこで道草を食っていた〕
「五月蝿い・・・あの子はどこだ!!」
大きなシャンデリアからほこりが落ちる。私が怒鳴ると、びぃぃんと音をたてて散らばった木材がかたかた動いた。
〔あの子・・・?ああ、メイドか。×したよ〕
ぞわぁっと背中が凍りつく。あの子が。私を理解し、命令なのでと断りながらも私を見てくれたあの子が。
・・・こいつに×された?
「何、を・・・!何を言ってるの!軽々しく言わないで!!」
〔嘘だと・・・思うのか?〕
ごとんと音をたてて階段から転がり落ちてきたのは・・・あの子の、大事にしていた髪飾り。あの子の髪がわざとらしく絡まっていて・・・赤いモノがその場に満ちた。


あんず #159 - 16.03.26 04:41
「お母さん、ただいま。遅くなって、ごめんなさい・・・」
ぎぃぃと鳴る扉を開けると、そこにはお母さんが疲れた顔で立っていた。
母「・・・良いのよ、中へお入り」
すぐに笑顔になり、私に壊れかけの松葉づえを渡してくれる。それでも、お母さんから漂ってくる異様な雰囲気だけは変わらなかった。

「・・・メイド、ただいま」
暗く静かな洋館。かつかつと早足で歩く私の足音がホールに響く。
いつもならどこからともかく現れるメイドの姿が見えないだけなのに、底知れぬ不安が私に満ちる。
「・・・ねぇ、ったら」
かっかっかっ。徐々に足音が早く、落ち着かない音へと。
ホールの真ん中で座り込むまで、音は続き、無惨に途切れた。


あんず #159 - 16.03.25 20:55
Chapter3
 形だけの心、壊れかけのオートマタ


あんず #159 - 16.03.25 20:48
乃ノ佳は私をおぶって、家の軒下まで運んでくれた。その背中はとってもあったかくて、心地よかった。
「・・・ありがとう、ね。また今度も遊んでくれる?」
乃ノ佳「もちろん・・・すぐ、明日にでもあそこで待ってるから」
笑顔で手をふり、彼女は裏路地の暗闇へ消えていく。まだ出会って半日ほどなのに、1人がこんなにも心細い事を知って身震いする。
振り向けば、所々腐って変色した木の扉。見慣れた景色。
それなのに今日は、すごく奇妙な気分だった。


あんず #127 - 16.03.03 19:00
「・・・んん」
ぱちっと目を開けると、少し深い緑色の草むらが視界を埋め尽くす。包帯が端に映り、私は我にかえった。
満点の星空が、見える。もう辺りは暗く、遠くの電灯がちかちかと点滅しているのがわかる。
「起きて、乃ノ佳」
隣で寝ている乃ノ佳の肩を揺すると、彼女も目を覚ます。ごめんね、気づかなかったと言ってスカートをほろう姿を、私は後ろで眺めていた。
乃ノ佳「帰ろうか。家まで送るよ?」
「でも・・・足のせいで、遅くなっちゃうよ・・・」
私の体が不自由なせいで迷惑をかける訳にはいかない。乃ノ佳には1人で帰ってもわらわないといけない。
乃ノ佳「私が送りたいの。ほら」
「うわっ!」


あんず #127 - 16.02.29 17:22
「怖くなんか・・・ない」
エル「・・・え?」
目を見開いて私を見つめる少女に、また言葉を返す。
「エルは、普通じゃない。足が無いからって、普通でしょ?本当に怖いのは、人の気持ちもわからない、足がある普通じゃない大人だと思うの」
少しの間の沈黙。エルの視線はずっと私に向いていて、珍しいものを見るような目だった。
エル「・・・お母さん以外の人にそんなこと言われたの、初めて。・・・ありがとう、乃ノ佳」
涙声でお礼を言うエルの頭をそっと撫でる。包帯がほつれてきたのか、糸がひらひらと揺れていた。
「・・・どういたしまして。」
オレンジ色に染まってくる空を見上げて、私もつられて笑った。


あんず #127 - 16.02.28 15:21
「・・・あ、の・・・あなたの名前、教えてくれる?」
きょとんとした顔で私を見上げたが、すぐに笑顔になって口を開いてくれた。
エル「私はエルっていうの。ちょっと病気で体が弱いんだ。・・・お姉ちゃんは?」
「お、お姉ちゃん・・・!?あ、えっと、乃ノ佳だよ」
お姉ちゃん、なんて言われた事もないし言った事もない言葉をかけられて戸惑ったが、自分の名前を伝える。エルはよろしくね、と言って手を差し出してくれた。
その包帯でぐるぐる巻きにされた右手をぎゅっと握ると、ふんわりとした体温を感じる。
そして・・・見てしまった。
本来なら右足があるべき場所の、不自然な膨らみ。私の太ももの付け根よりも少し細い位の・・・短すぎる足を。
絶句している私の視線に気づいたのか、エルはその「膨らみ」をちらっと見て話す。
エル「・・・生まれつき右足がその先から無いの。怖い、でしょ」
小刻みに震える右手を強く握って、私は言葉を絞り出していく。


あんず #127 - 16.02.27 19:57
?「・・・誰か、いるの?」
怯えるような、好奇心満載のような声が私に届く。さぁっと風が吹いて、彼女の足元に生えたコスモスの花びらが舞う。
「・・・えっと。ごめんなさい、邪魔しちゃったみたいで」
小走りでその子の右横まで行ってしゃがみ、軽く頭を下げると、彼女の表情がぱあっと明るくなったように見えた。
?「すごい・・・お姫様みたい。可愛い!」
「えっ・・・?」
いつもは素っ気ない態度で追い払われたり、睨み付けられて物を投げられたりするのに・・・
この子は、違うのかな・・・?
紫の長いスカートを珍しそうに触ってみる彼女は、きゃっきゃと騒ぎながら笑っていた。


あんず #122 - 16.02.10 21:15
「・・・こっち、かな?」
ひび割れたコンクリートの上を走り、完全に壁で隔離された野原が見えてくる。
そこにいたのは・・・包帯まみれの・・・おそらく少女。黒猫の尻尾を左手で撫でると、ふわっと薄い紫の髪が広がり、緩んだ口元が見える。
?「ふふ、可愛い・・・」
「・・・」
にゃあと鳴いて額を少女の腕に擦り付ける猫は、真っ白い彼女にはぴったりだった。
いや、色の問題ではないが。どこかふわふわとした雰囲気の彼女には、凛々しいようでかわいらしい猫が似合うという意味だ。
?「・・・あっ」
コツッ、と、私の足元にあった小石が野原へ転がっていく。きづいた時にはもう遅い。
猫の耳がぴんっと立つ。私のいる路地をちらっと見て、反対側の通路へ走り去っていった。


あんず #118 - 16.02.06 13:03
「はぁ・・・っ、はぁ・・・」
全速力で駆けている内に息が切れて、へたっと座り込んでしまう。
ついに大の字になって寝転んでみれば、快晴の空と視界の端には黄色いパンジーの花。
「どこ、まで・・・来たんだろう」
上半身だけ起こし、辺りを見回すと、木々や花壇が見える。大きな庭園みたい。
「・・・あれ?」
足元に落ちていたモノを拾って、光に当てながら人差し指で転がしてみる。
それは・・・そこらに落ちている小石でも、私には到底手が出ない宝石でもなく。
一見・・・いや、飴だ。
ビニールに包まれたそれは、ずっと前に母と歩いた南町で買ったものとよく似ている。
懐かしいフォルムとほんのり香る鼈甲飴の匂いに、目を閉じると。
しゃっ、と、布が擦れるような音が聞こえた。


あんず #117 - 16.02.05 17:10
「・・・ごちそうさま。」
椅子から弾かれたように立ち上がり、玄関のドアノブに手をかける。
『どちらに行かれるのですか?』
しつこいな。
私は何も言わず、ぎゅっとノブを回した。

「・・・やっぱり、人見知りが酷いな」
町行く人々におすすめの行き先を聞いてみたりしたいのだが、この派手なドレスと生まれつきの人見知りのせいで孤立状態だ。
ここは、貧相な者達が住まう北町。だからこんな、派手派手しいドレスなど来ていても憎悪の対象でしかないのだ。
ぴちちっと、どこからか鳥の声がする。
金髪をかきあげて見上げてみれば、真っ白な鳥が東の方角へ、真上を通過していく。
「・・・たまには、こういうのも悪くない」
何故かざわつく心を誤魔化すようにそう言って、全力で鳥を追いかけていった。


あんず #105 - 16.01.24 19:10
感想・意見等々こちらにどうぞ。

4 件のレス

あんず #114 - 16.02.02 21:59
『お嬢様、料理はお口に合いましたでしょうか』
「・・・口に合うも合わないも、料理は変わらないんだから聞かないで。無駄にお金は使いたくないの」
かちゃかちゃとナイフが音をたて、父親・・・いや、男と、私と、メイドの間の空気をさらに重くする。
目の前にある食べかけのステーキは、わざわざ鹿を狩ってきたものらしい。・・・メイドが。やっぱり小鹿の肉は美味しい。柔らかくて、メイドの作るソースがなんともこれに合う。
赤ワインも混ぜたタレは、きちんとアルコールがとんでいて子供の私も普通に食べられる。ほのかに香る玉ねぎの香りが鼻を通るこの感じが、私のお気に入りでもあった。
ただ1つ、不満は・・・
〔・・・・・・・・・〕
この 薄汚い 男である。


あんず #112 - 16.01.31 16:51
「・・・あなたのせいでもっと最悪。その呼び方やめてちょうだい」
『そう言われましても、私はお嬢様以前に○○様の従者でございます。命令に背く事はできません』
強くそのメイドを睨み付けて、勢いをつけて起き上がる。
古い木材から、塵が落ちてくる。この屋敷を最後に修理したのは、私がまだ3歳程のころだったからか、かなり雨漏りも酷かった。
「・・・あんなの父親じゃない。構わないで」
メイドに服を受け取ってクローゼットの中で着替える。やっぱりここもほこり臭くて、若干カビもはえていた。
『お着替えが終わりましたら、リビングにお越しくださいませ。○○様がお待ちです』


あんず #111 - 16.01.30 21:13
「ねぇ」
振り向かない。
「ママ」
やっぱり振り向いてはくれない。
「ねぇってば」
がちゃっと戸が開く。
「ねぇ!!」

「・・・!」
視界が真っ赤に染まり、ソファから飛び起きる。
いつものようにわざとらしく飾られた壁が、私を苛立たせた。
『・・・お嬢様、気分は如何でしょうか』


あんず #111 - 16.01.30 08:10
Chapter2
 秘密の花園と可哀想な囚人


あんず #110 - 16.01.29 18:51
母「・・・おはよう、エル」
「お母さん・・・?もう、朝・・・」
結局お粥を食べて寝てしまったみたい。朝日が眩しい。
母「うん、お母さんお仕事に行ってくるから。今日も好きに遊んでいなさいね」
ぎぃぃと大きな音をたてて母は出ていく。残ったのは、ほこり臭い匂いと包帯だらけの私。
「たまに、は・・・いい」
ほどけかけていた足の包帯をきゅっと結んで、玄関の扉を開けた。


あんず #109 - 16.01.28 16:39
「あ・・・」
目を覚ませば、もう部屋は真っ暗だった。ベッドの横、シェルフの上のお粥はまだわずかに湯気がたっている。
「お母さん・・・?」
いつものように古くさいテーブルの上には、ゆらゆらと揺れる蝋燭の炎。
ドアの隙間から漏れる明かりは、私にとってとても珍しいものだった。いつもいつも私の部屋だけに明かりが灯されて、リビングや母の部屋は暗いままだ。
「お母さ・・・痛っ」
がたんっと音を起てて床に転がる私の体。相変わらず腐った匂いがする木の上でもがく。
なんとかシェルフに掴まって立ち上がり、テーブルや椅子を経由してドアまでたどり着いた。
「・・・?」カチャ
静かにドアを開けて、裸足のまま壁をつたって歩く。ぎしぎしと鳴る床が怖くて、暗い部屋を歩けなかったけど・・・今日は違う。足元が見えるもの。
ついに母の部屋の前まで歩いてきた。中から小さな話し声が聞こえる。
ドアノブに手をかける。次の瞬間・・・
私は手を離した。内側から漂ってくる香りで、入ってしまったら・・・開けてしまったら、二度と戻れないような気がして。
行きと同じように、壁をつたい自分の部屋へと戻っていった。


あんず #107 - 16.01.26 21:25
母「あら・・・少し良くなったわね。えらいえらい」
そっと私の髪を撫でる白い指先。冷たい色なのに、暖かい母親の手。
私は依然として母親の目を見る。少し緑がかった黒い瞳が私の醜い姿を映す。
「うん・・・お母さんの、お薬のおかげ・・・」
母はこの小さな町で、雑貨店を経営している。いつも母が持ってくるお薬は、その店で稼いだお金で買ったものだ。
いつかお返しをしたいと思っても、こんな体じゃ何もかも叶いはしない。だからせめて、仕事を楽にしてもらえるようにこまめにお薬を飲んで症状を抑えている。
母「ふふ・・・お母さん、頑張るからね。じゃあ、お粥持ってくるから」
ドアがぱたんと閉まって、その向こうでかちゃかちゃと食器が擦れる音が度々聞こえる。
「・・・少し、寝ようかな・・・」
薄暗いぼろぼろの部屋の中、私はそのままの姿勢で目を閉じた。


あんず #106 - 16.01.25 20:43
母「入るわよ、エル」
きぃ・・・と木が軋む音。振り返ると、そこにはいつもの母親の笑顔があった。
「・・・お母さん。お父さんは、まだ帰ってこないの?」
私はただ、問い詰める訳でもなく疑問を口に出してみる。母は少し悲しそうな表情を見せたが、すぐに明るく笑ってお仕事よ、と言った。
母「お父さんはね、エルの為にお金を稼いで、家族みんなで普通の暮らしができるように頑張ってくれてるの」
「そっか・・・」
私は、皮膚がかぶれている。いつも包帯で隠しているため、水を触るとじわじわと痒みが増してくる。母はそんなこともすぐに見つけてくれて、包帯を替えてくれて。
今だってほら・・・私の腕の包帯を丁寧に巻き取ってるの。
私は囚人だ。母親と一緒に牢屋に入れられた、罪深き囚人。
色々な人を裏切って・・・失望させた私には、何が悪いかなんてわかりはしないしね。


あんず #105 - 16.01.24 22:12
私には、生まれつき右足が無い。
太もも自体が存在しない、決して五体満足なんかじゃない体。
私には、友達がいない。
ガンや身体中の傷が辛くて、外になんて出なかったから。
お母さんが持ってくるお粥を食べて、ベッドの脇の窓から空を眺める。
それで満足だった。優しい母親が持ってくるお粥は、いつも美味しかったし、退屈なんてもの、私は知らないから。
そう、死ぬまで。死ぬまで・・・お母さんとの日々が続けば、それで。
どうせ死ぬんだから。私はもう、助からないんだから。
今日もそんなことを考えながら、沈んでいく夕日に見とれていた。


あんず #105 - 16.01.24 19:04
Chapter1
 私には右足が無い


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