確率統計の歴史の全体像を掴む

　
　現代人にとって確率統計の考え方の重要性はますます増しています。

たとえば最近はやりのビッグデータもそのひとつのあらわれだと思います。

確率統計は高校では「数学」として教えられていますが随分とクセのある数学です。

岩沢宏和氏は確率統計の歴史をひもときながら、
そのクセにこそ確率統計の本質があり、

そのクセに慣れ、
早く修得すればそれだけ豊かな物の見方ができ、
洞察力を身に
つけることができると言っています。


　この本は確率統計の歴史ものがたりで、
「数学書」ではありません。
確率統計の
歴史全体を280頁の本に納めるためにはかなりかけあしにならざるをえません。

そのためコラム（豆知識）の集まりの形をとって読みやすくしています。

ゴシップのネタ（誰と誰が仲が悪かったとか、
喧嘩したとか）の記事を
気軽に読んでいくうちに自然と確率統計の歴史を学ぶしくみになっています。


　数式もでてきますが、
あくまでこれは本文のコラムを理解するための補足です。

従ってこの部分はレベルもまちまちで、
舌足らずの感をうけます。
あまり気にせず
わからないところは読み飛ばせばいいと思います。
この本で確率統計の歴史の概要を
学んだ後、
興味を持った部分はちゃんとした専門書を読めということだと思います。

予備知識は不要ですが、
高校で習う程度の知識（つまり、
確率、
試行、
平均、
分散、

相関係数、
確率分布、
二項分布、
正規分布、
推定と検定など）を持っていると
「気持ちよく」読むことができます。


　残念なのは、
確率論の最近50の年の動き、
例えば確率過程や伊藤理論などへの
言及がないこと。
（統計学ではテューキー、
ボックス、
タオなど新しい分野に
触れているのに。
）読後は、
２０世紀後半の統計学をちゃんと勉強したくなりました。

シッカーマン・ダイスやエフロンのサイコロを知っただけでこの本を読んで
得した感あります。