説経節の中世から現代を逆照射してみる。

説経節は、
説教節ではない。

ご高説をコウベを垂れて給わるものではない。

街角で、
ささらを鳴らしながら、
おそらく節をつけて物語るモノガタリだ。


気ままな民衆を立ち止まらせ、
面白がらせ、
聞き入らせて、

時に涙を誘い、
時に笑いを取る。

そして物語のカタルシスの後には、

欠けた茶碗にチャリンと銭を入れてもらわねばならない。


だから説経節は、
民衆が求める物語の快楽がぎっしり詰まっている。

その代表作が「小栗判官」なのだから、
もうこれはウルトラ・エンターテイメントだ。

古代から現代まで、
日本人のお好み、
道行（みちゆき）スタイルなのもいい。


その説経節の快楽を、
著者自身の道行でたどってみたのが本書だ。

「をぐり」が巡った路、
藤沢から熊野まで、
丹念にたどりながら、

説経節とは何か。
そこから見えてくるものは何か。
私たち読者に問いかける。


本書を読んで、
自分もまた、
説経節の快楽に浸りたくなった。

ただ、
現代では、
説経節を演じている演者も場所も極端に少ない。

古典も面白いが、
もしかすると、
現代の説経節を創造しなければならないのかもしれない。