文明の歴史という観点から環境問題を論じた本です

前作「銃・鉄・病原菌」では文明の進歩の差異の原因を環境に求めましたが、
本作では文明の崩壊は構成員の意思決定によるものとして議論しています。


上巻で崩壊した文明、
崩壊の危機を乗り越えた文明の環境的・社会的な要素をとりあげましたが、
この下巻では現代文明が今抱えている環境問題に対して如何にして取り組むかということがテーマになっています。


このため上巻であげた個々の細かい要素は捨象されており、
文明の崩壊を気象変動などの外的要因に求めるのではなく、
社会及びその構成員が問題発生を予見・予測し、
その実際の発生を知覚し、
正しい取り組みを意思決定し、
そしてその対処を成功させるという一連の意思決定の失敗としています。


それらの意思決定は、
合理的もしくは不合理的の両方のケースがあり、
合理的には例えば特に特定集団の目先の利益に基づいた決定(現代日本でもみられますが)や社会の構成員が規範やスタイルの変化を頑なに拒むこといったことがあげられていますが、
それらは必ずしも過去の特異な事象ではなくわれわれの現代社会も抱えており、
環境問題の深刻さと政治的不安定さは密接にかかわりがあることが触れられています。


著者は人口増加、
第3世界の消費の増大からみて50年後に現代文明をとりまく環境は危機的な状況になると予想していますが、
人々の価値観の変化や社会を変化させる動き(環境保護、
EU統合など)、
そしてグローバル化のもたらした事例の共有に希望を託して、
「慎重な楽観主義者」の立場を締めくくっています。