最も美しい不倫作品は、愛と理性と哀しみの橋の下に

1995年公開、
落ち着いた大人同士のしっとりとした不倫映画で、
クリント・イーストウッドとメリル・ストリープの名優二人が、
見事に壮年男女が織り成す４日間の愛の物語を演じた傑作。

不倫自体に対する肯定や否定意見は本作を語るのにさして意味はない。
幸か不幸か家族が誰もいないタイミングで“その人”に出逢ってしまった衝撃への対処は人それぞれだからだ。

そもそも主婦が一人の時に独身男性を家に上げるべきか？から始まり、
愛の芽生えを感じ取ったら直ちに自制心を働かせるべきか？更なる危険を犯すべきか？等の選択肢に観客も翻弄される。

また、
主人公から離れてもし自分が不倫された配偶者の立場なら他人に奪われて悔しいのは果たして伴侶の心か身体か？墓場まで持っていって欲しいか？等々を考えさせられる。

こう書くと単なるワイドショーネタの様でもあるが、
そこは監督クリント・イーストウッドの手腕が光る。
自分の気持ちの変化にお互いに翻弄される、
二人の表情と無言の時間が醸す優しくも切ない時間は、
残酷にも徐々に期限を迎えていく。

その身の切られる思いが画面から溢れてくる、
その美しさは息苦しい程だ。

片田舎で静かに暮らす籠の中の小鳥に訪れた、
海を越えて渡る雄々しい鳥との出逢い、
その憧れと好奇心に対し、
多くの人間にとって家庭や年齢の足枷だけで抗うのは意外に難しいだろう。

二人の選択は観てのお楽しみとするが、
最後の観客への問いかけが、
「その熱愛を自分の死後に子供に伝えるべきかどうか？」だとは脚本の素晴らしさに改めて絶句する、
ハリウッド不倫映画では最高の名作です。