「東京が不況知らずだということは、そのころ世界に広く宣伝されていたらしい」（『小さいおうち』 文春文庫 52頁）

普通飛行機に乗っている時は寝てるかパソコンで仕事ですが、
何の気なしに映画「小さいおうち」を見てみました。
そうしたところ、
心地よい後味の悪さとでも言った様なものを感じたのでした。
そして、
原作にも興味を持ち『小さいおうち』 (文春文庫)を探して読んでみました。


映画と原作とでは板倉正治の決定的な一日の行動に違いがあります。
その違いによって、
「あの日、
坂の上の小さなおうちの恋愛事件が幕を閉じた」（文春文庫 249頁）という時の「恋愛事件」が誰と誰のものを指すのかについてに違いが出てくる様に思えます。
そして、
映画の方が布宮タキの悲しみはより深刻と感じます。
しかし、
どちらのケースでも、
布宮タキは何十年もの間人知れず苦しんだのだろうなぁと思います。


そして、
映画でタキ役を演じた黒木華さんはベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞されたとのこと。
外国人にも何らかの感慨を催させることができたのだと推察致します。
出演者の方々の演技とそれを支える原作の内容の豊かさに脱帽です。


また、
原作には、
平井時子が1940年12月14日の歌舞伎座での音楽会から帰ってきて、
　「リヒャルト・シュトラウスの＜祝典音楽＞も、
よかったけれど、
なんてったって素晴らしかったのは、
山田耕筰の指揮したイベールの＜祝典序曲＞よ」　と言う箇所があります（文春文庫 162頁）。
そして、
この「イベールの＜祝典序曲＞」は第四章のタイトルにもなっています。
実は、
同時期に同じ指揮者と楽団によってなされた演奏が録音されており、