胸躍り，焦がされ，紡がれる愛と歴史の物語

前巻ではいささか物足りなさもあった，魔法や文明を作り上げていくパートが楽しく，
安定をしてきた生活は，食料の自給自足，指導者の育成など，次の段階へと進みますが，
度を超えない範囲での苦労と工夫，変化や成長の窺えるやり取りが実に興味深く映ります．

ただ，ここでも語られるのは竜と人間の愛であり，自身に寄せられる想いを知りつつ，
寿命の差からすぐに離れてしまう哀しさ，何より待ち続けるもう一人の彼女への気持ち，
悩み，苦しみ，傷つけ合う姿は，応えてあげて欲しい，でも待っていてあげてもほしいと，
どちらも大事に想うが故に，踏み出せない男と同じく，読む側にも複雑な思いを抱かせます．

そんな彼の葛藤を解きほぐしたのは，過ぎ去った彼女が彼の幸せだけを願い残した言葉．
自分よりもただ彼のために，それでも冗談めかした小さな嫉妬にはチクリと胸が痛みます．

愛しても愛してもすぐに離れてしまう人間．残されるのはいつも男の側となりますが，
それでも彼は彼女たちと交わした言葉を，彼女たちは愛し，愛された長い大切な時間を，
そしてそれは親から子へ，人から人へ，ほかの種族へと，広がっていくのかもしれません．

前巻と同じかそれ以上の第二巻で，胸躍り，焦がされる次巻にも大いに期待をしたいです．