在りし日の土御門夜光の実像に迫る、過去篇へ突入！

待ちに待った、
そして待たされたかいのあった、
『東京レイヴンズ』最新刊です。
本シリーズでは、
虚像と実像が入り乱れた土御門夜光の謎めいた生涯や、
土御門家と相馬家との因縁が物語の大きな底流となっていました。
過去篇を描く本巻では、
ついに夜光の実像に迫り、
その両家の因縁が明かされていきます。


はじまりは昭和14年（1939年）の春、
第二次世界大戦の火ぶたが切って落とされてまだ間もないころ。
田舎でくすぶる陰陽道宗家の天才、
夜光のもとに、
相馬家の嫡子、
佐月が訪れたことにより、
運命の歯車が動き出します。

若きふたりは歳に似つかぬ深謀で牽制し合いながらも、
歳に似つかわしい理想をひそかに燃やし、
それを共有することで、
たがいに理解を深めていきます。
けれど日本も戦火の渦に巻き込まれんとする時代の趨勢は、
ふたりのゆるやかな成長を持つことなど許さず、
彼らを後戻りできぬ地点にまで押し流していきます。


前巻では、
土御門夏目となんらかの結びつきがあると判明した、
飛車丸の幼少期の視点で終わりました。
本巻ではそれと地続きのように、
おもに飛車丸の視点で語られます。
しかも読者はその後に起きる不幸（作中の災禍だけでなく、
現実の戦禍もふくめて）をあるていど知っています。

それゆえ本巻では山場がかなり短いにもかかわず、
作中で飛車丸が未来に対して抱く漠然として不安や焦燥に思わず共感し、
一緒になってハラハラし、
あっという間に最後まで読んでしまいました。


うれしいのは、
現代篇で登場してきたキャラクターのルーツとなるキャラクター、
あるいは、
現代篇のキャラクター本人までもが登場すること。
とくに往時の闇寺「星宿寺」の様子も感慨深いものがありました。
なによりインパクト抜群なのが今回の敵。
斜め上をいく設定で、
びっくりしつつ、
なるほどなぁと納得です。


もちろんシリーズ本編だけ読んできても充分おもしろいのですが、
本巻には番外編の読者に対する目配せもあります。
土御門夜光、
飛車丸、
角行鬼の三人がそろうエピソード「ザ・ナイト・ビフォー・トライアングル」（『東京レイヴンズEX3 memories in nest』所収）を読んでいると、
作中で言及される話題や彼ら三人の関係性がより理解でき、
よりいっそう楽しめるはず。