家紋に興味がある方にオススメできる紋事典

現在出版されていて気軽に手に入る紋帖や紋事典は、
図版が汚かったり、
桔梗の形が間違っていたり、
図版が左右や上下が逆だったり、
名称が明らかなミスだったり、
実はかなり間違いが多い。
家紋は「本になっているのは正しい」と考えるのは危険な分野である。
このことは知っている人には常識だが、
しっかりした書籍が今までになかったと言っても過言ではないと思う。
家紋を扱う業界では、
一応は「平安紋鑑」が基準になっているようだが、
いろは順で並んでいたり版が潰れていたりと見にくく感じる面もある。
この書籍に掲載されている紋は、
データを作り直しているようで、
鮮明な図像を見ることができる。
形もかなり正確に描かれており、
家紋の並び順も自然紋・植物紋・動物紋・器材紋などと分類されて明快に並べられている。
同じ系統で見比べるにも適しているので、
形のパターンを眺めるだけでも充分に楽しい。
各紋の解説も付記され、
由縁や一通りの知識を得るにも良く、
とてもバランスよくまとまっている。
さらに掲載している数も平安紋鑑を大きく上回り、
代表的なものから驚くような変化をしているものまで、
とても精査されているように見える。

やっとオススメできる紋事典が出版されたと感じている。
家紋に興味がある方に是非まず手に取って頂きたい本。

さらに家紋のパターン集としてもかなり優秀だと思うので、
ロゴマークを検討されている方やデザイナーの方にも、
形態の抽象化やその派生・展開性を知る一級の参考資料でもあると思う。