元老院議員、騎士階級を排除して、古代ローマの被支配階級を描き尽くす時代風俗書

２０１１年に出版された本の翻訳。
原題は「見えざるローマ人・・娼婦、
アウトロー、
奴隷、
庶民の男女・・歴史に忘れ去られた人々」である。
いわゆる古代ローマ時代風俗書であるが、
ローマの政治、
文化の担い手であった元老院議員、
騎士階級を全く切り捨ててしまい、
対象を庶民（奴隷等含む）に絞った点が目新しい。
（もちろん、
庶民との関連では貴族層も登場するが）。
資料はたくさん引用されているが、
出番が多いのは、
ドロテオス「星読みの歌」、
アルテミドロス「夢判断の書」、
ペトロニウス「サテュリコン」、
アブレイオス「黄金の驢馬」、
バブリオス「寓話集」、
碑文、
聖書関連である。

第一章（約６８頁）庶民の男性・・資産、
社会的地位、
職業意識、
夫婦関係、
泥棒対策、
組合など。
比較的詳しく書かれているのが、
呪文、
性生活、
性行為、
浴場である。

第二章（約６１頁）庶民の女性・・女性の役割、
美徳、
結婚、
社会的地位、
持参金、
結婚後の性生活、
夫婦間性交法、
性生活以外の楽しみ、
子育て、
子供遺棄、
健康、
出産死亡、
夫の暴力、
離婚、
内職、
外での仕事、
産婆業、
踊り子、
主婦売春、
魔術業、
農業、
法的地位等・・まんべんなく書かれている。

第三章（約３９頁）貧民・・ローマ世界の大多数が貧しかったとする。
貧民（物乞い、
小農、
小作農、
日雇い労働者等）の生活、
人口統計、
価値観、
「怠け癖」の根底、
宗教、
服従、
正義、
反乱。

第四章（約６４頁）奴隷・・奴隷制、
奴隷の史料、
奴隷の数と供給源、
奴隷生活、
身体的虐待、
精神的虐待、
性的虐待（レイプ、
男色、
強制売春）、
遺棄、
奴隷の思考様式、
奴隷の共同体、
奴隷間の虐待、
奴隷の出産、
奴隷の子の法的地位、
副業、
反抗、
逃亡、
主人との結婚、
社会的交流、
解放
第五章（約３６頁）解放奴隷・・解放奴隷の西洋史的特異性（ローマ以外に存在しない）、
解放奴隷の栄達への敵意、
解放奴隷の人生、
主人との関係（義務、
庇護、
反抗）、
解放奴隷の家族、
祭儀との関わり、

第六章（約５４頁）兵士・・新兵募集、
専門職としての兵士、
給与と手当、
入隊と訓練、
陣営生活、
医療処置、
食事、
下水、
技能取得、
昇進、
賄賂、
民間人への暴力、
恐喝、
結婚禁止、
事実婚の黙認、
兵士の性生活、
レイプの容認、
娼婦や奴隷との性交、
同性愛、
宗教生活、
社会的流動性、
配置換え、
軍事行動、
退役後の生活