フェアな分析を通して書かれた良書

この本は、
多くの資料等を基に、
冷静な目を通して書かれた良書だと思う。
歴史、
取り分け「昭和天皇」に関しての評価は、
世上には様々な意見、
見方があると思われるが、
伊藤氏のこの本で述べられている記述も、
一つの見方として傾聴に値する見解であると、
私は考える。
特に、
東京裁判に関して、
昭和天皇が東京裁判の判決とは関係なく、
松岡洋右氏（Ａ級戦犯としての判決を待たずに獄中死）や白鳥敏夫氏（前駐イタリア大使）を実際の戦争に導いた者として許していなかったこと、
更に弟の高松宮様も戦争開始に積極的であったとして、
戦後長く不信感を持っていたこと、
皇后様と皇太子妃美智子様との不和、
皇后が特定の女官に影響されていたこと、
等々が興味深かった。
私として一番今後の歴史上の問題としているのは、
昭和天皇の戦争責任である。
伊藤氏が、
昭和天皇は道義的責任はあるが、
それ以上はないとしているが、
そうだろうかと一抹の疑問が残る。
がしかし、
これは歴史の評価を待ちたいマターだと思う。
只、
「あとがき」で述べられているように、
私は、
ハーバート・ビックス氏や井上清氏のような考え方には組みすることも出来ないが..
本書は結構な時間を掛けて読んだので、
読後は満足感が残った。
良書だと思う。