中級者のための再入門に最適

ロールシャッハ法に関する文献はたくさんあるけれど，初心者に偏った本か，専門的すぎる本かどちらかのことが多いように思います。
この本は，中級者のためのものだとうれしくなりました。
ロールシャッハの施行と解釈についての章は実践的に役立つのみでなく，基本的考え方をきちんとまとめてあって，まさに中級者が上級になるための壁を乗り越える良きガイドとなると思います。

　それ以上によいのが，１~３章です。
ロールシャッハを取ったけどどう使うのか，どう報告するのか，なかなか悩むところが多い中級者にはよい指針です。
個人的には，４章がマニュアルっぽい使い方ができて良いのですけど，５章の「枠」の考え方も「目から鱗が落ちる」印象でした。
監訳者は，１３章についてあとがきで言及していますが，１４章も出色です。

　残念なのは，文献一覧が下巻に回ったことです。
せっかく文献の表示が出ているのに，確認の仕方がないのです。

　とにかく，初心者の域を脱し，上級をねらうテスターは，エクスナー法であろうと，片口法であろうと，阪大方式，名大方式であろうと，クロッパーであろうと，一度は目を通して自分の技量と，考え方を再整理すべきでしょう。

　初心者には少し難しいかもしれませんが，入門編としても使えますから買って損はしません。
上級者も後輩に教えるときの杖として使えます。
でも，敢えて断言すると，「中級者が中級を脱皮するための教科書」だと思います。