医療批判も含まれる、良心的な医師の本

小学高校学年であれば、
ほぼ読みこなせるように優しくかみ砕いた説明がなされているだけでなく、
何故アトピー治療に医師が本腰を入れがたいのか、
ステロイドが悪魔の薬の如く忌み嫌われるのかの説明もされており、
非常に良心的な内容となっている。


しかも著者は、
臨床勤務医でもあるので、
言葉にも責任感が伺える。


アトピー診療は、
問診などに時間がかかる割に、
請求点数が少ないので、
少ない時間しかかけられず、
どうしてもおざなりにならざるを得ない。

その弊害が、
症状にあったステロイドの適切な使い方指導を出来なくし、
効果を妨げているのだが、
本書では薬の強さ・塗る部位による吸収率の違い・自分で出来る症状にあったステロイドの見分け方・スキンケアなどを説明している。


　医師には、
症状を収める事「だけ」に熱心で、
患者さんの生活に充分目を向けていない者もいるが、
著者は、
治療に生きず、
人生を謳歌するために生きる治療を本書で謳っており、
そこにも共感した。


「病院や先生に依存しない！」
「絶対に外来で良くする！」
との著者と患者さんとの約束を、
どれだけの皮膚科医が患者さんと交わす事を実践できるだろうかとは思うが、
医師会や全国自治体病院協議会などが診療報酬点数改定要求を出してはいても未だ充分な点数は付かず、
時間をかけて診るために自由診療で行っている院もある現在、
「面倒がらずに毎日手間をかけて、
維持療法をしっかりやる！」よう患者さん側にも手間をかけてもらわねば、
症状を抑える事は難しいように思う。


いずれにしてもお任せでなく、
患者さん自身も勉強をし、
疑問を問い、
実践することが近道となる。


その道しるべとして、
本書を有効活用して欲しい。