久々に密度が高く読み応えあるリアリズム小説を読みました

マラマッドって学生時代短編くらい読んだっけ、
今頃になってなぜか復刊なんだと思いつつ手に取った本書。

リアリズムに立脚した小説でこれだけ密度の濃いものは久しぶりに読んだ気がします。


ストーリーを追うと19世紀的なビルドゥングズ・ロマンのにおいもあり、
雑誌ニューヨーカー的な都会生活の描写もあり、
筆致は淡々としつつも実はかなりの波乱も含まれている--この内容の充実ぶりも見事ですが、
それぞれの登場人物の内的独白と実際の振る舞い、
言動のバランスが実にうまくて、
結果、
平凡なはずの人物に対する興味をかき立て飽きさせません。


描かれている世界も、
20世紀半ば過ぎのニューヨークのユダヤ人社会というと、
我々からは遠いように感じますが、
その生活実感は21世紀初めの日本と決してかけ離れていません。
そこにユダヤ人の独特の人生観が加わるぶん、
深みを増しているように思われ、
さらに読み応えを強く感じさせます。


今頃になって復刊してくれたのは、
出版社と翻訳者の大英断だったんだ、
読後にはそう思えてくるすばらしい作品でした。