アメリカ海兵隊―非営利型組織の自己革新 (中公新書) の感想

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参照データ

タイトルアメリカ海兵隊―非営利型組織の自己革新 (中公新書)
発売日販売日未定
製作者野中 郁次郎
販売元中央公論社
JANコード9784121012722
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 軍事 » 軍事入門

購入者の感想

海兵隊は多くの困難を乗り越えて存続してきたがその本質はアメリカという国外に戦場を持つことにある。三軍との縄張り争いからのアイデンティティの確立にある。
ブラゴ―は一般に市場での競争による淘汰を受けない非営利の公的組織に革新を促す刺激はその生存に対する危機であると指摘し、その危機とは1予算の削減、据置、2他の公的組織による当該組織の機能の吸収、3当該組織の廃止の三つだ。その危機が組織を革新に駆り立てる。
実は本書の内容はこれに尽きる。アメリカ海兵隊の歴史を草創期から説き起こし、それぞれの画期となる戦いでの変化を示す。それは海兵隊ならではの戦いでなくてはならずそれが三軍への吸収解体の抑止力となった。特に日本との戦いでは画期的な水陸両用戦術が実現し、ガダルカナル島、タラワ、硫黄島そして困難と思われた沖縄戦での勝利を得た。特にタラワの戦いは水陸両用戦術の要となる揚陸艇が水域と陸域の接続を達成した。
本書には無いが海兵隊は3つの軍団の司令部がある。そのうち最大最強の一つは沖縄にある。その視野は東太平洋全域を覆っている。かつて朝鮮戦争ではその地政学上の位置がものを言った。
ただ、その輝かしい歴史とその行動原理の説明は興味深いが、一つ本書では語られていない点がある。本書にあるとおり海兵隊は憲法により唯一大統領の直接命令で動かせる軍隊だ。三軍は常に議会からの戦争大権の授権が必要なのに対し本質的に民主的なコントロールより国家の意志を優先する組織でもある。そのため何かがあれば世界中の紛争で投入するのは海兵隊となる。
海兵隊は新戦術と新兵器を生み出し新たな戦場を克服した。そして存在価値を認めさせ予算と組織を確保した。端的にはそんな内容だが、肝心なのは海兵隊は退役がなく終身身分であるということだ。政治家となるもの官僚となるものも多数いる。そしてそのネットワークは強力なロビー活動の源泉となる。
本書には政治がかけている。それが最も大きな穴だ。

アメリカ海兵隊といえば、我々にとっては「太平洋戦争当時にガダルカナルや硫黄島で日本軍と激闘を交えた米軍の水陸両用戦部隊」というイメージが強いです。でも太平洋戦争開始前に米海兵隊がどういった存在なのか。彼らがどのような歴史的経緯を経て現在の姿になったのか。それらについては意外と知られていないのではないでしょうか。

本書では米海兵隊の誕生から様々な戦いを経て現在の姿に至るまでの経緯を追っています。艦上における警察官としての役割からその歴史が始まった米海兵隊は、やがて前進基地防御という新しい任務を獲得し、さらに日本の脅威が顕在化してくると「水陸両用作戦」という新しい任務を創出していきました。そして太平洋戦争における日本軍との激闘は、その概念をより発展させることになりました。

その後朝鮮、ベトナムの戦いを経た米海兵隊は「海兵・空・陸機動部隊」(MAGTF)という概念を生み出し、それを具現化するためにV/STOL攻撃機、海上事前集積艦(MPS)、揚陸戦強襲艦(LHA)等を開発していきました。そして今日、米海兵隊は緊急展開部隊の中核として、戦場に真っ先に投入されて敵と戦う役割を担っています。

本書の最後に「米海兵隊が如何にして自己革新を遂げていったのか」を筆者が分析しています。非営利組織である米海兵隊が現在の姿に発展できたのは何故か?。常にその存在に疑問が投げかけられながらも現在まで生き残って来られたのは何故か?。それらの問いかけに対し、筆者は組織論の視点から興味深い分析を提供しています。

初版が1995年ということで、時期的にはやや古さを感じさせる内容にはなっています。しかし米海兵隊という組織について考え直してみるキッカケとしては好適な著作といえるでしょう。常にダイナミックに変化する組織としての米海兵隊。そんな側面を読み取ることができるという点で本書はお奨めしたい作品です。

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