富士日記〈上〉 (中公文庫) の感想
参照データ
タイトル | 富士日記〈上〉 (中公文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 武田 百合子 |
販売元 | 中央公論社 |
JANコード | 9784122028418 |
カテゴリ | 文学・評論 » エッセー・随筆 » 日記・書簡 » 日本文学 |
購入者の感想
武田百合子さんは遺作『日日雑記』の終わりで「ベルイマンの映画をみていると、夫婦っていいなあ、と思う」と書いています。私は『富士日記』を読むと、生きているっていいなあと、いつも思います。早起きしたり寝坊したり、ご飯を丁寧につくったり適当にして、おいしく食べたり時に食べ過ぎ、用事をしたりさぼったり、笑ったり怒ったり、空を見上げ花を見て、またご飯を作っては食べ、月や星を見たりして眠りにつく。そういうなだらかな暮らしの細かなことすべてが平安をくれます。
幼く母は亡くしたものの比較的富裕な環境で、父の静かな愛にくるまれての暮らしを全てなくし敗戦後の焼け跡に立った少女が、年の離れた父のようでもある夫と、自分のようでもある娘とで再びつくった、現実からやや隔たった富士の山荘は、一旦は失った安住できる場そのもので、かつてあった懐かしいものすべてが詰め込まれていたようです。
その暮らしを夫の死後に振り返って書かれたこの本は二重の懐かしさにくるまれていて、私は生きているのが嫌になった夜これを読み、明日食べるおいしいものなどを思って眠りにつきます。
幼く母は亡くしたものの比較的富裕な環境で、父の静かな愛にくるまれての暮らしを全てなくし敗戦後の焼け跡に立った少女が、年の離れた父のようでもある夫と、自分のようでもある娘とで再びつくった、現実からやや隔たった富士の山荘は、一旦は失った安住できる場そのもので、かつてあった懐かしいものすべてが詰め込まれていたようです。
その暮らしを夫の死後に振り返って書かれたこの本は二重の懐かしさにくるまれていて、私は生きているのが嫌になった夜これを読み、明日食べるおいしいものなどを思って眠りにつきます。