中国思想を考える―未来を開く伝統 (中公新書) の感想

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タイトル中国思想を考える―未来を開く伝統 (中公新書)
発売日販売日未定
製作者金谷 治
販売元中央公論社
JANコード9784121011206
カテゴリ人文・思想 » 哲学・思想 » 東洋思想 » 東洋哲学入門

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岩波文庫において「論語」「孫子」「荘子」「韓非子」などを訳注されている故 金谷治東北大学名誉教授による中国思想の入門書。氏の講演をもとにまとめられたもので、講演は学生・研究者さらには一般の人々であったこともあり、書の内容は詳しい考証やこみいった論理は避けられ、読みやすい。

中国(人・思想)における、ものごとを一面的に見ない基本的な態度、「両面思考」が、陰と陽の対立関係を用いて平易に説明されている。
冒頭「中国人は憎らしいほど大人だ」という中山完造氏(上海 内山書店で魯迅と親交があった)の言葉に始まり、
 ・どちらか一方がなければ他方も存在しない
 ・反対者がいてこそ、こちらの存在もある
 ・対立することは良いことだ
 ・陰中に陽有り、陽中に陰あり
 ・満れば欠くる ・盛者必衰 ・諸行無常
 ・人間万事塞翁が馬
 ・もの極まれば変ず
 ・禍福はあざなえる縄のごとし
などなど、所々のエピソードなどを交え、その対立関係、補完関係、両面思考などが、繰り返し語られるので、脱落することなく読み込める。

また中庸では、朱子学以降で強調された「誠の哲学」は、外していわば古典的な「中庸」論が展開されます。
金谷氏は、「両端の中は、右と左の程良い中程であって、それを守ってゆくのは柔軟な融通性が必要。ほど良さと融通性といったあいまいな言葉から想像できるように、この段階では中庸は日和見主義や御都合主義に堕落する危険性も大いにある」とし、現実尊重の処世上の倫理としては、なかなかレベルの高い思想であると語っています。
また、中庸は両端や左右といった平面で考えるのではなく、円錐形をイメージし統合的高みにある思想であると立体的に考えるべきだと唱えます。
これによって「子に温にして’氏A威ありて猛ならず、恭にして安なり」(述而篇)や、「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」(子路篇)などの意味が鮮明になってきます。

氏の岩波文庫 訳注書が一層味わい深いものになるかもしれません。

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