永続敗戦論――戦後日本の核心 (atプラス叢書04) の感想

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タイトル永続敗戦論――戦後日本の核心 (atプラス叢書04)
発売日販売日未定
製作者白井 聡
販売元太田出版
JANコード9784778313593
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

豊下楢彦の一連の研究成果を深く十分に読みこなし、それをベースにして基本的で本源的な問題を端的に提示するという形でまとめられている。特に「永続敗戦」は、日本は連合国に戦争で負けた(敗戦)し、ポツダム宣言を受諾し、占領統治を受け、サンフランシスコ講和条約及び日米安保条約を批准したという原点をしっかり理解していないと駄目である。それは、無茶な侵略戦争をし、無謀な日米戦争をはじめ、遂に完膚なきまでに叩きのめされ敗北したのに、それを「敗戦」と認めず「終戦」として誤魔化し、その反省や責任追及や謝罪や保証をきちんと追求し続けることをしないという自己責任を伴う主体性を持たず、「鬼畜米英」であったものがいやにして「民主主義者」になった如くにふるまってきた日本人、特に権力を持ち当然責任を負わなければならない層が平然と威張り続けてきた日本、反面、その層がアメリカに庇護をなんの恥ずかしさも感じることなくすがっている反面,「戦後総決算」という矛盾を意識することもない、恥を知らない姿を浮き彫りにし、告発している書である。ドイツとのあまりにもの違いに目が眩むほどである。一読されたし。

行本)
『永続敗戦』とは、
日本がアメリカにのみ東アジア・太平洋戦争の敗北を認めつつ、
国内およびアジア諸国には敗北を認めていないこと、
と要約できるだろう。
この立場に立ったとき、
・福島原発は
・領土問題は
・北朝鮮問題は
・アメリカとの関係は、
それぞれをどう読み解けるかを書いているのが本書。

 本書のテーマに関しては31頁で著者は以下の通り端的に断言している。

 「本書が取り組むのは『戦後』を認識の上で終わらせることである」

 「終わらせる」とは、少なくとも現段階では「終わっていない」ということを意味する。表題の「永続敗戦」という
言葉はまさにその「終わっていない」状況を表している。

 「もはや戦後ではない」という言葉は1956年の経済白書に記載された有名な言葉だ。そこで宣言された戦後終了とは
要は経済力に非常に重きを置いた歴史観であったということであろう。事実日本は高度成長を経て、世界有数の経済大国と
なっていったことがその後の歴史だ。

 「経済」だけが物事を切り取る切り口であって良いかどうか。これは僕のような歴史ないし経済の素人に
とっても疑問である。但し、敗戦した日本が心の拠り所にしたものが経済であったということは事実では
ないかと思う。実際敗戦当時の状況を考えると日本経済の回復は「奇跡的」に見えたとしてもおかしくない。
但し、日本人はそれを自らの能力と勤勉に帰したかもしれない。一方、歴史家は朝鮮戦争等の特殊に有利な状況
があったことに帰してもおかしくない。素人の僕としてはどちらも真実だろうと思う程度だ。

 但し、その間にきちんと「敗戦したことを咀嚼し腹の底まで落とし込まなかった」のが日本であるという
ことが著者のいう「永続敗戦」なのだと読んだ。「対米追従」と「アジア諸国(ロシアを含む)に対する排外的な
ナショナリズム」という二面性を著者は強く主張している。

 著者の主張は明確であり、その言葉は快刀乱麻である。著者の断言調が本書の大きな特徴だ。明快な断言は
時として耳に心地よい。内容が心地よくなくても口調によっては聞いていて納得させられてしまうという
ことは良くあることだ。その意味で僕として著者の語っていることが本当に正しいのかどうかに関しては
留保を付けたい。
 しかしながら、「戦後は、若しくは敗戦は、まだ終わっていない」という主張に関しては皮膚感覚で同意出来る

永続的敗戦とは、第二次世界大戦に敗北したことを日本人が認識において否認することと、日米安全保障体制をはじめとする戦後の政治、経済、軍事体制の下で日本が対米従属を続けてきた(今も続けている)ことが、相互に補完し合うという状況を指し示す概念である。自民党の政治家が歴史発言や靖国神社への参拝によって中国や韓国との外交関係を損なう例を我々はこれまでしばしば目にしてきたが、これは、日米安保条約がある限り、東アジアの中で孤立しても、アメリカとの関係は維持される(アメリカは日本を見捨てない)という安心感によるものである。この安心感には、冷戦体制下の東アジアで日本が唯一の民主主義国であり、経済大国である限り、ある程度現実的な根拠があった(アメリカにとって日本は東アジアで最も重要な同盟国であった)。だから、アメリカも、日本の政治家が極東裁判を否定したり、戦後民主主義を乗り越えようとしても、それが言説のレベルに止まり現実に乗り越えようとしない限り、不問に付してきた。ところが、冷戦が終了し、韓国や台湾が民主化され、中国が経済大国化すると、東アジアの地政学が大きく変化し、日本はアメリカにとって東アジアで最も重要なパートナーという構図が崩れる。日本の政治家の発言や行動によって中国や韓国との外交関係が毀損されると、アメリカとしてもこれを放置しておくことができなくなり、堪忍袋の緒が切れる状況も出てくる(「傀儡の分際でツケ上がるな」)。こうして、日本が対米従属を続けることによって敗戦を否認するという永続的敗戦の構造が成立し難くなる。このような状況の中で、戦後という時代概念を吟味し、これを認識の上で終わらせることで、永続的敗戦を思想的に克服しようと試みたのが本書である。

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太田出版から発売された白井 聡の永続敗戦論――戦後日本の核心 (atプラス叢書04)(JAN:9784778313593)の感想と評価
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