キロワットアワー・イズ・マネー エネルギーが地域通貨になる日、日本は蘇る の感想
参照データ
タイトル | キロワットアワー・イズ・マネー エネルギーが地域通貨になる日、日本は蘇る |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 村上敦 |
販売元 | いしずえ |
JANコード | 9784861310355 |
カテゴリ | 本 » ジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 |
購入者の感想
地域通貨の仕組みの話が中心かと思い手にしましたが、結構壮大な話で、最近切迫感をもって各所で語られる人口減少下で崩壊の恐れがある地域経済について、いかに危機を回避するか具体的提言を、主にドイツをひきあいに説くものです。設備の技術的な説明はそこそこに、地域や家計のエネルギー収支を金銭収支に換算して、ある程度の規模の地方であればエネルギーを地域内で循環させたほうが長期的にはインフラはじめ地域経済が生き残るシナリオを描けるのだといいます。折しも中央公論12月号で元総務大臣で長らく岩手県知事も務めた増田寛也は、2040年に日本の全自治体数の約3分の1が消滅可能性が高い(人口1万人未満)状態に陥るという推計を示した論文を寄稿しています。村上氏の著書にも同様の考察があり、2050年には日本の地域の半数は消滅するという悲観的予想を立てています。こうした地方が生き残るのに喫緊に必要なのはスマートグリッドやらメガソーラーではなく、地域内のエネルギー生産量と消費量を均衡させる「エネルギー自立」という考え方と、それを支える様々な制度及び市民投資による適正規模のエネルギー関連のインフラ設備なのだということです。ここで扱われるエネルギーのなかで、特に熱利用を要とするのが大きな特徴で、コージェネと呼ばれる熱電併用システムの利用など熱分野の高効率化が大前提。ボイラーで熱をつくって電気にして熱に戻す利用法が効率が悪いことは直観的にわかります。遠隔地に熱エネルギーをダイレクトに送るのは難しくとも、限定的なエリアであれば熱を使うのには熱のまま送るのが理にかなうのでしょう。メガソーラーなどを排するのは、計画から実行運転まで非常に時間がかかるためで、バイオマスや風力などの、建設と利用にいたるスピード感を重視しています。もちろん制度的なあとおしが必要だし、日本の例でいうと失敗があまりにも多いではないかという指摘もありそうですが、エリアを決めて供給するエネルギーの能力を定めるため「熱需要曲線」を検討しなければならないとのこと。しばしば地方自治体や第3セクターが過大なバイオマスプラントを立地して赤字に陥るのも、この適正規模の吟味を怠った結果だといいます。とつらつら内容を書きましたが、本書はこうしたテクニカルな内容に終始しているわけではなく、地方自治体の議員を選出する制度のありかたや個人の生活様式から辿る経済活動の