イムリ 15 (ビームコミックス) の感想

　殲滅戦を仕掛けるカーマの軍勢に対し、超能力を宿す道具と彩輪の作り方を学び、一条の光が射したデュルク、ニコ率いるイムリ陣営。
　過度の彩輪取得には否定的なデュルクとは別の想いを秘めたイムリの頭領ニコ。
　一方、我が身の危険を感じ独断行動を始めた純粋培養の覚醒者ミューバに対して老獪なデュガロ呪大師が幾重にも張り巡らした周到な罠。
　依然デュガロへの信頼が篤いミューバは敢え無く散ってしまうのか。

　歴史大河SF宮廷ドラマですが、主人公達を巡る健気で時に過剰な愛と信頼と裏切りの描写に今回も圧倒されました。
　多少外観は変えても、作者が時に笑いや恐怖、哀しみを持って一貫して描き続けているのが搾取される人間関係、特に残酷な保護者とそれを完全受容しようとして傷付き足掻く登場人物です。
　｢愛｣と言うには余りにも歪な非常に激しい感情です。
　三宅氏はどこで斯様な人間観を身に付けたのかも、伺いたいと思いました。

　本作は過去作品の集大成で、読む者の感情を揺さぶる優秀なメロドラマとなっています。
　ただ、独自の用語に彩られた複雑な設定、灰汁の強い絵、余りにも容赦無い描写が続く為、斯様な感情弄りが苦手な方が疲弊する心配も御座いますが…。

　さらに重く、素晴らしい引きで次巻に続きますが、早く読みたくて待ちきれません。