新しい時代のお金の教科書 (ちくまプリマー新書) の感想

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タイトル新しい時代のお金の教科書 (ちくまプリマー新書)
発売日2017-12-10
製作者山口揚平
販売元筑摩書房
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購入者の感想

本書は「お金がなくなる世界を想像してみましょう」という呼びかけに思えた。

想像を促すヒントとして、
お金の起源や正体に迫ることから始まり(第1章、第2章)、
価値を巡る社会の変化を捉える第3章〜第4章、
そして筆者なりの提言となる第5章という構成だ。

そんな本書は読者を二分すると思われる。
すなわち、「お金がない社会なんてユートピア(机上の空論)だよ」と消極的に読むか、
そんな未来が訪れたらいいかも?という希望を持って読むかの2つである。

人々が気づいていないユートピア(理想)や、
その真逆のディストピア(絶望)を描くことは、
元来アーティストに求められる役割であるとすると、
アーティスト(哲学者)山口揚平氏の創造的エッセイと思って読むことをオススメしたい。

山口さんの書籍の特徴とも言える、愛らしいタッチの絵や
意味がわかりそうでわからないコンサルちっくなマトリクスや図式などが、
一層そう思わせる。

つまり、山口さんの論に納得できればそれはそれで良いし、
ユートピアだなと思えば、無理に納得しようと思わず、
自分なりに「お金がない世界」「お金とは別な価値」に想像を巡らせて読めば良い。

※ちなみに、筆者が時間主義経済と呼ぶ時間が通貨となる世界を描いたSF映画に
 「TIME」(アンドリュー・ニコル)があり、
 こちらは、どちらかというとディストピア的に描かれているので対照的に映る。

本書の展開に既視感を覚えたのは、例えば、お金の起源については、
「貨幣の新世界史」(カビール・セガール)に詳しく、
また、お金の正体は信用であること、
その信用を支えているのは何なのかといった捉え方は、
物語調で読むとすれば「なぜ政府は信頼できないのか」(ピーター・D・シフ;アンドリュー・J・シフ)、
漫画なら「インベスターZ」でもわかりやすく十分かもしれない。

この本は、過去、現在、未来におけるお金の存在意義&価値、そして世界に与える影響が平易な言葉で分かりやすく書かれていました。
では、この時期に「お金の話」を記す意図は何でしょう?
 
この本のユニークな点は、貨幣や(貨幣が蓄積された)資本を否定したり、逆らったりしていない点にあると思います。
起点を否定から入るか、受容から入るか、その後の展開に大きな影響を及ぼすと思うからです。
本書は、お金の本質、歴史、性質と言ったものを理解し、その上で人がどうあるべきで、どうするべきかを論じられていますので、著者の主張がとても受け容れやすく感じられました。すなわち、とても理解しやすかったです。
 
そんな読者にやさしい本書が持つ重要なキーワードの一つが「無機化」だと思います。
世界、システム、生命は、分断化、切断化、断片化の波に吞まれています。
そして、お金はその媒介としての役割を持っています。
もし、幸福の本質が周囲の人や自分の期待との一体性だとしたら、切断され無機化が進む現在の流れに明るい未来はないでしょうか。
 
しかし、無機化さえ悪ではなく、有機/無機のバランスの中に動的な生命の豊かさがあると著者は説きます。
有機と無機の調和に新たな価値の創造が見出せるとしたら、それは私たちにとって福音となるのではないでしょうか。
 
経済問題。
問題を解くには、「解決」以外にも「解消」という手段があると思います。
否定せずに、ましてや夢想(ユートピア)の世界に逃げずに、豊かな社会システムをつくろうとする著者の気概を感じました。
 
分断され、無機化される世界に息苦しさを感じているならば、この本を読んで未来にへの光明を得てみてはいかがでしょうか。
私は大いなる希望を頂きましたので、星を5つ付けさせていただきました。

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