変身 の感想

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参照データ

タイトル変身
発売日2012-09-14
製作者フランツ カフカ
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カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 評論・文学研究 » 日本文学研究

購入者の感想

魅力ある「0円」の「青空文庫」で、その作者名とタイトルを仄聞したことのある小説を見つけて読んだのが本小説である。中学・高校以来、殆ど小説から遠ざかっていたが、最近ちょっとしたきっかけで短編などに手を出しているが、前回の『河童』に続いて、今回も些か難解な作品に当たってしまったようである。内容については“ネ タ バ レ”にならない程度に留めたいが、ある朝目を覚ますと主人公の「グレゴール・ザムザ」の『変身』から物語は始まる。この『変身』が何故に起きたのか、その原因や背景について作品中では明確には触れられていない。主人公が『変身』するのは本訳では「巨大な毒虫」とあるが、翻訳者によっては単に“虫”とするのもあるらしい。冒頭から唐突感溢れる書き出しが印象的で、『変身』した主人公とその家族(父・母・妹ほかーー「下宿人」や「手伝い婆さん」等も登場する)との(非日常的な)日常と、これも些か唐突なラスト・シーンを迎える。

端的に言ってしまうと、唐突な冒頭と唐突な結末があって、作者の主張がなかなか読み取れないのである。まさか“ユーモア”小説でもないだろうし(“ユーモア”とすると主人公に対する家族の対応と結末が整合性を欠いて、一層結末の意味が不明になる)、かと言って社会風刺・批評とも思えないのである。作者のカフカの主張は、唐突な(予想外の)結末と家族の対応にあるのだろうが、どう読み取れば良いのか一筋縄では行かないような気がする。何かしら社会的な暗喩とも思えなくもないが、具体性は不明である。結末もしっくり来ないし、父からの(詳細は伏せる)「リンゴ」がラストにも登場するが、何の暗示なのかも気になるところで、何とも不思議な小説であるとしか言いようがない。

訳は原田義人氏によるものです。私は、高橋義孝氏の訳を読み慣れているのですが、原田義人氏のものにもそれほど違和感を感じませんでした。

結末を含め、本当に重いです。
その意味では、精神的に安定したときに読むべき作品ですし、万人受けはしないと思います。

主人公が毒虫になるという異常な事件が、極めて冷静な報告調の文章で描かれます。
異常で不自然なことが、ごく自然な語り口で語られることで、異常な事柄がリアリティをもって読者に伝わってくるのは、カフカの類まれな才能によるものだと思います。

毒虫になってしまい、父の投げたリンゴのせいで最期をむかえる主人公を、「社会から疎外された存在」ととらえ、「私もいつそうなってもおかしくない」とか「今の自分がそうだ」と読むことが可能だと思います。
名作といわれる小説の特徴は、「まるで自分のことだ。自分にしかこの小説の真の意味は分からないはずだ」と読者に思わせるところにあるといいますが、まさにこの作品はその特徴を持っていると思います。

カフカのメッセージは、人間の存在は脆弱である、ということではないでしょうか。
人間の存在は脆弱である、ということはおそらく普遍的真理であると思います。
そうであるかぎり、この作品は古典として半永久的に読まれ続けるのだと思います。

そうした作品がいまこうした形で、電子書籍で読めることは大変にありがたいことだと思います。

読者の方はそれぞれ文章の好みがあると思いますので、念のため、冒頭箇所を引用しておきます。

「ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変ってしまっているのに気づいた。彼は甲殻のように固い背中を下にして横たわり、頭を少し上げると、何本もの弓形のすじにわかれてこんもりと盛り上がっている自分の茶色の腹が見えた。」

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