デンジャラス の感想

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参照データ

タイトルデンジャラス
発売日販売日未定
製作者桐野 夏生
販売元中央公論新社
JANコード9784120049859
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » か行の著者

購入者の感想

桐野夏生さんは『ナニカアル』で林芙美子を、『IN』で島尾敏雄を描きました。
この『デンジャラス』は文豪谷崎潤一郎と彼の代表作『細雪』のモデル、
つまり妻松子(『細雪』では幸子)、その妹重子(雪子)を軸に据えた作品です。

語り手は重子。『細雪』の雪子のモデルとして理想化された彼女ですが
華族出身の夫との結婚生活もあまり幸せではなく、戦時中は谷崎一家とともに苦労を重ねます。
この重子の夫に関しては、谷崎関係の本を少々読んできた私も知らなかった事実が多く描かれて興味深く、
『鍵』に登場する郁子の行為が実は重子をモデルにしていたことも意外でした。

姉の夫、谷崎に愛されたことを喜んだ重子も、やがて新時代の女性、嫁の千萬子の存在に翻弄されることになります。
濃密な描写で人間の悪意を描くのが巧みな桐野さんですが、上品な関西弁のせいか本作では登場人物の駆け引きにもどこか雅さが感じられます。
千萬子と谷崎の関係については二人の往復書簡を読んだ後では特に新味はありませんでしたが
重子や松子の晩年の懊悩が迫真的に描かれています。

谷崎の創作の源でありながら、彼の才能と個性に翻弄される女たちの緊張関係を描いた本作。
ラストのあっと言わせる展開には賛否両論あるでしょうが、私には納得できるものでした。
最近読んだ『抱く女』『夜の谷を行く』はいささか期待外れでしたが、
もう少し書き込んで欲しいと感じさせられる部分もあったものの、本作では桐野節を堪能できました。

文豪谷崎の巨大なエゴと渡り合った、複雑さを孕んだミューズ、重子が実に魅力的な作品です。

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中央公論新社から発売された桐野 夏生のデンジャラス(JAN:9784120049859)の感想と評価
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