ドゴールのいるフランス---危機の時代のリーダーの条件 の感想

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タイトルドゴールのいるフランス---危機の時代のリーダーの条件
発売日販売日未定
製作者山口 昌子
販売元河出書房新社
JANコード9784309245164
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

ドゴールが今でも回顧されるのは、彼がフランスの危機に際して二度国家を救ったからであろう。ドイツ占領下に対独協力ヴィシー政権が成立したとき、イギリスからBBCを通じて「呼びかけ」を行い、亡命政権とレジスタンスによって戦勝国となり、国連の「常任理事国」の一角を占めたこと。1958年のアルジェリア危機に際して、フランスの内乱と分裂を防ぎ、アフリカからの名誉ある撤退に成功したこと。この業績のどちらか一つだけでも「救世主」として国家によって永遠に顕彰される価値がある。
以前、私は、よく考えたものだ。
もし、第二次世界大戦で日本が、偶然と幸運によって戦勝国の一員に留まれたとして、10年後には、民族主義が台頭する「朝鮮半島」から名誉ある撤退をすることは可能だっただろうか。「満州国」で相次ぐ中国共産党の破壊工作とソビエトの浸透工作に対して、日本の権益を守りながら国家を運営することができたのだろうか。国内で沸騰する「満州・韓国を守れ!!」という世論。号外を乱発する「アサヒ」「東京日々」といったマスコミ。その上で、戦後世界の潮流を洞察し、現実的で勇気ある決断を下せる政治家がいただろうか。昭和10年代の国家体制のまま、戦後世界を乗り切ることが可能だっただろうか。
激動の時代は、一身を捨てて大義に殉ずる胆力のある政治家を育てる。幕末と維新を生きた大久保利通、伊藤博文、そして賊軍の出である原敬。彼らであれば、「洞察力と勇気、信ずる力」を持って事に対処したかも知れない。しかし、彼らなき後の日本に、本当に、国難を救う「ドゴール」は現れ得ただろうか。
産経新聞のパリ支局長として名高い著者は、現代に生きる「ドゴール」、危機に際して不死鳥のように現れるその影を追い続けているかのようだ。

本書はドゴールの評伝ではあるが通史的なものではない。
幼少期や下野後についての叙述も少なく、周囲から彼がどのように見えていたかに触れ、
副題にある様な「危機の時代のリーダーの条件」を模索するものである。

「ドゴール将軍に取り憑かれた」という著者が本書を著した理由は、
第二次大戦とアルジェリア戦争という困難な時期にリーダーシップを発揮し祖国を救った
彼を「危機の政治家」として、日本だけでなく世界も振り返る必要があるからだ。

ドイツとの休戦後、ロンドンのBBCスタジオから「呼びかけ」を行っただけでも
ドゴールを「危機の政治家」と呼ぶことは可能かもしれない。
しかし、本書を読んで強く印象付けられたのは、むしろ、アルジェリア戦争を解決して見せたドゴールであった。
それは彼が批判した第四共和制どころか第三共和政までが、今日の日本の政治状況と酷似しているからである。

権限の弱い大統領の下で、第四共和政は1946年から1958年までに24回も内閣が入れ替わった。
アルジェリア戦争当時、くるくる変わる内閣は党利党略に明け暮れ、何ら有効な解決策を見いだせない。
政党は分派的性格によって弱体化しているだけでなく、政党自身の衰微が加わって離合集散が激しい。
政府は国家の防衛、名誉、独立とは何らの尺度も関係もない姿をさらけ出し、
議員達の駆け引き、策謀、ほくそ笑みの中で崩壊寸前であった。
そこで彼は「議会制民主主義は民主主義の唯一の形式ではない」と大統領権限の強化に乗り出した。

確かに、共和制をとるフランスと違い立憲君主制をとる日本では、彼の様な政治家が成功を収めるとは限らない。
しかし、短期政権ばかりが続く現代日本にとって、第四共和制の失敗から学ぶこともある様に思われる。
本書中、著者のドゴール以外の人物評については納得できない箇所もあったが、
「危機の政治家」の一つのモデルとしてドゴールを紹介する試みは十分に成功したと言えよう。

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