私を通りすぎたスパイたち (文春e-book) の感想

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タイトル私を通りすぎたスパイたち (文春e-book)
発売日2016-04-08
製作者佐々淳行
販売元文藝春秋
JANコード登録されていません
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

「ウイル」(2016年5月号)の書評で、石井英夫さんが本書を取り上げて指摘しているように、ゾルゲ・尾崎事件と著者佐々さん(&その父弘雄さんと兄克明さん)との息詰まる葛藤(尾崎が逮捕され、父も連座して逮捕されるかもしれない。酒で特高への嫌悪をまぎらわしつつも怯える父の姿をみて、子供心になにかをしなくてはと思う……)がこの本の圧巻であり白眉といえそうだ。佐々さんはいま85歳。70年以上昔の昭和16年10月、11歳の時に、そうした歴史の生き証人的な舞台が「自宅」にてあったというところがすごいというしかない。
特高のでっちあげの捜査で父が逮捕されるかもしれない、そうはさせじと、せっせと、父と尾崎の交友を証拠立てるかもしれない写真やメモなどを風呂のたきつけとして燃やす……。お兄さんは、佐々少年より年上で、中学生で多感であったこともあり、そのあと、戦時中には、東條批判のビラ(東條を殺せ)を学内でばらまいたりしたこともあったという。
そんな秘話から始まり、にもかかわらずというべきか、佐々さんは、戦後、民主警察の一員となり、スパイ摘発の外事警察のメンバーとして活躍していく。スパイ防止法もないまま、北朝鮮の国内潜入スパイを捕まえても、別件逮捕の微罪程度でしかさばけないことへの切歯扼腕。ちゃんと法整備をしていれば、北朝鮮による拉致事件も未然に防げたことだろう。
1963年(昭和38年)に書いた本の一節が、「おわりに-1963年の危惧」の中に転載されている。ノーテンキな当時の日本の新聞報道に比べて、鋭い予感があったというべきか。ところどころ、ハニートラップの内外の事例やらスパイ捜査上のユーモアタッチな描写もある。家族とは、国家とは、自由とは、国益とは何かを、考えさせられながらも、楽しく面白く読める本だった。

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