問う力 始まりのコミュニケーション―長田弘連続対談 の感想

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参照データ

タイトル問う力 始まりのコミュニケーション―長田弘連続対談
発売日販売日未定
製作者長田 弘
販売元みすず書房
JANコード9784622074410
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 評論・文学研究 » 論文集・講演集・対談集

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“コミュニケーション”。この言葉の意味するところを様々な角度から見つめる一書。
進行役(或いは聞き役?)の長田弘は詩人であるが、対談に登場する人物は噺家、作家、スポーツ監督、ジャーナリスト、動物園の園長とまさに多士済々。
どこから読んでも、一言一言が重みを持っている。その切り口は時に“世代間のコミュニケーション”であったり、時に“言葉のないコミュニケーション”であったりする。
 対談に登場する人物は自らの生業を媒介として、不特定多数の人とコミュニケーションを図る。表面的には“顔の見えないコミュニケーション”といえるかもしれないが、コミュニケーションの持つ可能性からみれば本当はこちらの方が“本来のコミュニケーション”として“一対一”の機能を果たしているのではないのか、とも考えることができる。
 個人的に共感を憶えるのは作家、瀬戸内寂聴との対談である。
 女性の読者が多いことで知られる瀬戸内氏の近作『秘花』が書店に並ぶや中高年の男性からの感想が多く寄せられていることを話の端緒に、苦手なことを強いるより得意なことに専念させることで相手の才能を開花させることが幸せにつながるのでは、との問いかけは一聴に値すると思う。
 中世に花開いた様々な文化が今に伝わっているのは、1つの枠で全てを括ろうとする姿勢がなかったからかもしれない。例えば、世阿弥は身分としては“同朋衆”という低い地位にあった一方で、近習として権力者の傍にいてその庇護を受けて猿楽能を“能楽”にまで昇華させた。そしてもしかしたら、次の時代に花開いた“歌舞伎”の創始者、阿国はそれを見て独自にアレンジすることで観客を呼ぶ芸能の道を拓いたかもしれない。世阿弥の“見る習い・聞く習い・感じる習い”としての稽古、に関する2人の対話からは“コミュニケーション”に不可欠な要素としての“想像力”を大事に育てていくことが大切、との後の世代への宿題が提示されている。
 教育の現場で苦闘する先生方をはじめ、会社の中間管理職や経営責任を負う方々にも是非、一読してほしい書物である。
 それほどに現在の日本は“現場と管理部門でのコミュニケーションの欠落”が深刻になっている。

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