We Were the Mulvaneys (Oprah's Book Club) の感想
参照データ
タイトル | We Were the Mulvaneys (Oprah's Book Club) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | Joyce Carol Oates |
販売元 | Highbridge Audio |
JANコード | 9781565114951 |
カテゴリ | » 洋書 » By Publisher » Penguin Books |
購入者の感想
ジョイス・キャロル・オーツというアメリカの女流作家は日本では全く紹介されていない。これがどの方面の人たちの責任なのか,と私はいつも思う。アメリカでは彼女に関する研究論文なども既に出ている。もはや文豪と呼んでもよいはずである。これまで30編以上の長編小説を発表している多作家で,しかもそれがみな傑作なのだからすごい。最近では Blonde というマリリン・モンローの伝記小説を発表して話題になった。この We were the Mulvaneys にしても,いまや世界的ベストセラーであり,ドイツ語・フランス語を始めとする各国語に翻訳されている。私は一回読み終わってその直後にもう一回読まずにおれなかった。小説の主人公はマルヴァニー家の人々だ。ニューヨーク州北部の,森に囲まれた美しい地域に住み,物質的にも精神的にも恵まれた,幸せで平穏な生活を送っている。勤勉な若い夫婦とその素晴らしい子供たち。スポーツの得意な長男,学業優秀な次男,美人で気立てのよい長女,それに末の男の子(彼が物語の語り手だ)。ところがある日,長女マリアンが隣人の息子にレープされるという事件が起きる。そしてこれを境に,家族一人一人の上にいろいろの形で不幸が降り掛かるようになる。あげくは広大な邸宅を手放すことになり家族が離散してしまうのだ。物語の展開の過酷さに私は胸を突かれ,時に息が止まる程の思いをした。語り口は淡々としている。sensational な描写があるわけではない。家族の各人が節度をもった当然の行動をしてゆく中で,いつの間にか誰の努力も善意も,報われなくなってしまうという状況を描いている。時にハッとする程 dramatic でもある。運命というのはこんなものなのだろうか,と心の奥に深い衝撃を与える小説である。