羆撃ち (小学館文庫) の感想

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タイトル羆撃ち (小学館文庫)
発売日2012-02-03
製作者久保 俊治
販売元小学館
JANコード9784094086911
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

久々に激しく心を揺さぶられた本です。著者は現在の日本では数少ない本物の猟師です。北海道の深い森で何日も野宿しながら羆(ひぐま)やシカの足跡を追い、1対1の真剣な格闘の末、撃ち取るのです。
 町の生活に慣れた者にはない自然や動物に対する深い知恵や畏敬の念が伝わってきます。そして、その底には獲物を追うために鍛えられ磨き上げられた目には見えない五感があります。 狩猟民が表現する言葉を持ったら、かくも豊かな世界を描くことができるのかと思わされます。後半は自ら育てた猟犬フチとの出会いと別れが溢れんばかりの愛情と切なさでつづられ、深く心に染み入りました。

わたる風、鳥のさえずり、野花のかおり、木立の陰。大地を踏み進み込む 氏の 力強い足音が、サクッサクッと きこえてきそう。
読む自分も、標津の自然の 濃い緑の奥にいるようだ。極寒の冬「空気は 少しの振動でも ひびが走り 粉々にさけてしまいそう。
野営をしている テントの内側には びっしりと針のような霜がはりつき ロウソクのあかりで キラキラ輝いている。
そのテントから、首を出せば まつげが凍って まばたきが しずらく、鼻毛が鼻腔で、つっぱる。」どんだけ 寒いのだろう
半端ない 冷気が伝道してくる。自分の命を 楯に 一人 動物を 時に這い、追い 探し獲る。 そこまでの 一挙手一投足が、唾を
呑み込むように伝わる。特に羆  《吉村氏著 熊嵐 北林氏著 ファントムピークスを 読んでいたので》氏が とてつもない
豪傑 強人のように思えるのだけど‥……チ・ガ・ウのだ。
弟が 生きていたら 生前 吉村氏の本を薦めてくれていたから、今度は 私がこの 「羆撃ち」を是非薦めたのに‥……。

プロのハンターとして羆を始めとして様々な野生動物を狩猟してきた久保俊治氏の実体験が描かれている。

雪山を始めとする自然の美しさと厳しさ、獲物を追跡するハンターの緊張と興奮、獲物をしとめた瞬間の満足感、しとめた獲物を食べる食事の美味なこと、などが鮮やかにそして実に生き生きと描かれていて、読者はまるで久保氏と一緒に現場にいるかのような追体験をすることが出来る。この描写力はすごい。

数多くの獲物を殺し、解体して食べるハンターという職業は一見残酷だが、久保氏の文章からは自分で獲物を仕留めるハンターだからこそ感得できる生命への尊厳が伝わってくるため、読んでいると崇高な気持ちにさえなってくる。

そして本書の最も白眉は、猟犬のフチと筆者との出会いから別れだ。本当に素晴らしい猟犬と出会えるのは一生に一回とのことだが、賢くて勇敢で主人に尽くすフチが久保氏の指導により成長していく様には惹きつけられるし、こちらまで嬉しくなる。久保氏のフチへの愛情とフチの久保氏への信頼は素晴らしく、このような絆を持つことができた両者が羨ましくなってしまう。だからこそ、別れのシーンの胸が張り裂けるような悲しみもじーんと伝わってきた。

良い作品です。

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