昭和の劇―映画脚本家・笠原和夫 の感想

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参照データ

タイトル昭和の劇―映画脚本家・笠原和夫
発売日販売日未定
製作者笠原 和夫
販売元太田出版
JANコード9784872336955
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 戯曲・シナリオ » 日本

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全600ページ、膨大な資料(全フィルモグラフィと、シナリオの抜粋など)と特に登場人物に関しての詳しい注釈がついていて、これだけで昭和史(特に昭和初頭から戦後60年代頃まで)のかなりの部分が見えてくる。主に笠原氏と荒井晴彦、絓秀実両氏による対談形式であるため、非常に読みやすくなっている。
笠原和夫氏は、東映で美空ひばり映画から始まり、藤純子モノなどの仁侠映画、「仁義なき戦い」などの実録路線、「大日本帝国」「二百三高地」などの戦争映画を経て、日本映画界の衰退に伴い「愛・旅立ち」というマッチ明菜競演のトンデモ映画とかの脚本までも書いた人。彼は軍国少年で海軍入りするものの戦争に行くことはなかったのだが、テロリズムと昭和天皇が終生のテーマだった。226事件!の!!生き残り、日本共産党員、右翼、政治家、「仁義なき戦い」のモデルとなった広島の極道たちなど膨大な人数の人たちに綿密な取材をして、リアリズムを追求した作品を書きつつも、会社や監督たちと徹底的に戦ってきた。このあたりは、読んでいる者の魂をもたぎらせるほどの凄絶な戦いで、彼はストレスのあまり胃を失い苦しみながらも、傑作を数多く世に送り出した。
226事件の将校たちに強い共感を覚えたり、日本を勝ち目のない戦争に追いやったエリート将校たちや、戦争責任を果たそうとしなかった昭和天皇に対して忸怩たる思いを抱いたり、映画会社の人たちの無責任さに悔し涙を飲んだり、口調はあくまでも穏やかでありながら、こんなにも凄まじくアナーキーな情熱を映画に注ぎ込んだ男がいたとは。
偶然にも、!!!この本を読んでいる最中に、昭和2年に生まれた笠原和夫氏の訃報を聞くことになった。まさに、昭和という時代への鎮魂歌となっている。

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太田出版から発売された笠原 和夫の昭和の劇―映画脚本家・笠原和夫(JAN:9784872336955)の感想と評価
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