ピカソと過ごしたある日の午後―コクトーが撮った29枚の写真 の感想

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参照データ

タイトルピカソと過ごしたある日の午後―コクトーが撮った29枚の写真
発売日販売日未定
製作者ビリー クルーヴァー
販売元白水社
JANコード9784560038741
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

 先行するレビューの評価があまりに低いので、おもわず筆をとりました。
 これはこれまで読んだ本の中でも最も印象に残る書物の一つです。まず切り口が素晴らしい。著者クルーヴァーは、ピカソやサティ、マックス・ジャコブにキスリングといった、今世紀前半の才能たちが写っている何枚かの写真に注目し、その写真と同じ時に撮られたと思われる一連の写真を何年もかけて丹念に集めてきます。そしてそれがどこでいつ誰によって撮られたものか、ということを(さらにはどんなカメラやフィルムで撮られているか、ということまで)ほとんど探偵捜査並みの手際で特定してゆきます。結果として、これが1916年8月12日の午後に、当時パリの若い芸術家たちのたまり場となっていたカフェ・ド・ラ・ロトンドの周辺で、コクトーによって撮られたものである、ということがわかってきます。そして著者は、その日の午後に起こったことをほとんど分刻みで解明してゆき、これがおそらくバレエ『パラード』の計画が出発した日であり、さらにはセーヌ右岸(後に若い芸術家のパトロンたちともなってゆくブルジョアたちの世界)に、コクトーとピカソの結びつきを介して、モンパルナスの貧しい芸術家たちが橋渡しされてゆく、まさにその歴史的瞬間が記録されているのだ、というところまで筆を進めています。
 自らの設定した問題を、自分の開発した方法で解明しながら、最終的に美術史、パリ史、社会史にとってきわめて重要な発見を導く、というのは研究者にとってほとんど夢のような仕事です。正統の美術史家とは言い難いクルーヴァー自身にとっても、これは研究の途上で偶然のようにしてめぐりあった珠玉のようなテーマであり、それを大切に育てて得た美しい帰結だったと思われます。若いピカソの傲岸でしかも魅力的な横顔、そして当時の愛人パクレットの奇妙でしかもキュートな服装。20世紀の芸術に関心のある人すべてにおすすめです。

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