TUGUMI(つぐみ) (中公文庫) の感想

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参照データ

タイトルTUGUMI(つぐみ) (中公文庫)
発売日販売日未定
製作者吉本 ばなな
販売元中央公論社
JANコード9784122018839
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » や・ら・わ行の著者

購入者の感想

吉本ばななのベストセラー作だが、この小説には二つの点で魅力を感じる。
まず一つは伊豆の海辺の町の描写。海辺の景色、海と自然の中で旅館を営む家族の姿。誰もがこのような故郷を持っているわけではない。だが、日本人が懐かしく感じる景色や空気感であり、「心の中の故郷」ではないだろうか。
「つぐみ」や「まりあ」はその懐かしい景色の中で描かれることによって、一層瑞々しく生き生きとして読む側に迫ってくる。

そしてヒロイン「つぐみ」の描写が印象的だ。病弱という設定により、自意識過剰で、我儘で、少し意地悪で、でも本当は悪い人間として描かれる。実は、人間誰しも「つぐみ」のような欠点は持っていて、日常を無難に生きるために抑えているだけなのだと思う。しかし、人間、自意識過剰で自分に都合良く考えるからなんとか心のバランスを保っているのかも知れない。「つぐみ」はそんな自分自身の姿を描く。その描き方はストレートであっけらかんとして、ここまで描いてくれれば爽快感もある。

ラストの一連のシークエンスは、そんな「つぐみ」の心の脱皮を感じさせる。自意識過剰をすべて出し切ったことで、自分の中の嫌な部分を昇華させることができたのではないだろうか? 「つぐみ」はこの小説の後も「つぐみ」であり続けると思う。でも、少しだけ、そんな自分を冷静に見つめていくような予感がする。

「TUGUMI」という小説は、懐かしい風景の描写の中、自意識過剰な自分を再確認させ、それを冷静に自分で理解させてくれる小説だった。それもうじうじとした感じではなく、カラッとした爽快感で。

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