シベリア抑留―未完の悲劇 (岩波新書) の感想
参照データ
タイトル | シベリア抑留―未完の悲劇 (岩波新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 栗原 俊雄 |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784004312079 |
カテゴリ | 歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般 |
購入者の感想
たった200ページ余り、700円の新書に、何十万人もの人間の狂わされた一生が、何万家族の何代にもわたる悲劇が、生存者の肉声と、丁寧に紐解かれる資料によって伝わってくる。著者は私と同世代で、戦争をまったく経験していないが、その淡々とした筆致がかえって国家の重さと軽さ、人間の脆さとしぶとさを際立たせる。
シベリアにおける想像を絶する強制労働の過酷さと、ぎりぎりの生存競争のなかで剥き出しにされる人間の獣性。帰還者の言葉が胸に突き刺さる。
「我々生き残った者はね、加害者なんですよ」。
収容所においても軍の序列がそのまま残され、上官たちは温かい部屋と十分な食料を与えられるなか、新兵や下級兵たちは飢えや寒さや理不尽な暴力によって埋葬が追い付かないくらいの勢いで死んでいった。
この本には、こうした生存にかかわる恐怖のほか、さらに二種類の恐怖が記されている。
ひとつはソ連式民主主義=共産主義を植え付ける洗脳教育だ。生き残りのためと割り切って染まった「ふり」をしていた者がいた一方、日本軍内の旧秩序が保たれたまま、精神的、肉体的に極限状態に置かれた兵士たちのなかには、本気でソ連を礼賛する者、帰国しても思想教育の効果が抜けなかった者も相当いたという。この洗脳にともなう密告や吊るし上げは、同胞間に根深い不信と亀裂を生じさせた。教育という名の凶器である。
シベリアにおける想像を絶する強制労働の過酷さと、ぎりぎりの生存競争のなかで剥き出しにされる人間の獣性。帰還者の言葉が胸に突き刺さる。
「我々生き残った者はね、加害者なんですよ」。
収容所においても軍の序列がそのまま残され、上官たちは温かい部屋と十分な食料を与えられるなか、新兵や下級兵たちは飢えや寒さや理不尽な暴力によって埋葬が追い付かないくらいの勢いで死んでいった。
この本には、こうした生存にかかわる恐怖のほか、さらに二種類の恐怖が記されている。
ひとつはソ連式民主主義=共産主義を植え付ける洗脳教育だ。生き残りのためと割り切って染まった「ふり」をしていた者がいた一方、日本軍内の旧秩序が保たれたまま、精神的、肉体的に極限状態に置かれた兵士たちのなかには、本気でソ連を礼賛する者、帰国しても思想教育の効果が抜けなかった者も相当いたという。この洗脳にともなう密告や吊るし上げは、同胞間に根深い不信と亀裂を生じさせた。教育という名の凶器である。