混迷するシリア――歴史と政治構造から読み解く の感想

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タイトル混迷するシリア――歴史と政治構造から読み解く
発売日販売日未定
製作者青山 弘之
販売元岩波書店
JANコード9784000229234
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

【構成】
前半部分の多くがシリアという地域(社会の諸相)ないし国家(統治機構)の説明に割かれているため、「ニュース便乗型」の書籍とは言えない。内容は著者が筆者の一人である研究文献『現代シリア・レバノンの政治構造』を書き下した印象であり、その点でシリアにおける「アラブの春」が政権を打倒するか否かにかかわらず一読の価値ある一冊となっている。後半部分の現状分析では、幾多の人物・組織が登場し、「(悪の)政権」対「(正義の)レジスタンス」という理解が幻想以外の何者でもないことを痛感させられた。

【特徴と留意点】
筆者は勧善懲悪型の安易な「民主化」論を痛烈に批判する立場であり、この点が本書の最も際立つ特徴であるといえる。現状分析においては、政権側の対応と反体制の諸組織の雲集霧散を克明に追っており、綺麗事では済まされない紛争の姿を克明に描き出している。

ただし、一般市民の生活(平穏時・紛争化を問わず)と日本の政府および市民団体によるシリアへの関与(経済制裁や難民支援)に関する記述は含まれないため、これらに関しては各種レポートなどを参照する必要がある。また、写真資料が掲載されていないため、シリアないし中東地域に元々関心の高い読者でなければ一読でイメージを掴むことが少々難しい印象を受けた。シリア社会が紛争によって崩壊していく様はまさに悲劇と言えるが、この点を読者は本書の丹念な現状分析(の行間)から読み取る必要がある。

【追記】
「あとがき」によれば、本書の著者はウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」での情報発信や『中東研究』(中東調査会発行)をはじめとする数々の機関誌での論文発表を行っているとのこと。今後もシリアを覆う不穏な「アラブの春」をフォローし続けることができそうです。
そういった関心のはじめの一歩にもなる本だと思います。

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岩波書店から発売された青山 弘之の混迷するシリア――歴史と政治構造から読み解く(JAN:9784000229234)の感想と評価
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