ヨブ記講演 (岩波文庫) の感想

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タイトルヨブ記講演 (岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者内村 鑑三
販売元岩波書店
JANコード9784003815113
カテゴリ人文・思想 » 宗教 » キリスト教・ユダヤ教 » キリスト教一般

購入者の感想

『ヨブ記』は、旧約の中でも『出エジプト記』と並ぶ不思議な書である。ヤハウェ神の言動があまりにも理不尽で、理解し難く、受け入れ難いからである。サタンと戯れに賭けをしてヨブを苦しめるだけではなく、ヨブの前に現れたヤハウェが、サイやカバなどを挙げて「オレがそれを造った創造主だぞ、どうだ恐れ入ったか」と自慢するその幼稚さ。ヤハウェは耐え難いほど惨めで子供じみた神である。ユングは『ヨブへの答え』を書き、それを認め、これは神ヤハウェが人間ヨブに敗北したことを証する重大な場面であるとした。私はユングの解釈に大きな感銘を受けたが、しかし正統キリスト者の『ヨブ記』解釈は違う。内村鑑三は、『ヨブ記』は「信仰的立場に立ちて初めて十分に了解せられる書であり・・・、文学や思想として研究する時は、一の謎として終るのみ」で(本書p12f.)、聖書学者にありがちな学問的アプローチはダメと断ずる。「人はなにゆえ艱難に会するか、殊に義者がなにゆえ艱難に会するか、これヨブ記の提出する問題である」(p11)。信仰に篤く行いの正しい者がこの世で受けた激しい苦しみは、神の試練であるということを理解したとき、その者は義とされ救済される。これが『ヨブ記』の主題であり、ヤハウェ神がわざと幼稚・不可解に描かれているのは、「神の試練」を理解しない者を排除するために、読者にハードルを課しているのである。

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