極光のかげに―シベリア俘虜記 (岩波文庫) の感想

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参照データ

タイトル極光のかげに―シベリア俘虜記 (岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者高杉 一郎
販売元岩波書店
JANコード9784003318317
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

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 シベリア収容所体験記としてはソルジエニーツインの小説「収容所群島」があまりにも有名だが、我が国で「収容所群島」が出版される20年も前に「極光のかげに」が書かれたことは十分注目していい。著者高杉一郎は出征前、横浜事件で知られた「改造社」の編集員だった。活動家ではなかったが、大学時代からマルクスはじめ左翼思想に精通しており、シベリア収容所に送られた時、スターリンの共産主義に最初から批判的だったわけではない。「極光のかげに」でもできる限り先入観をさけ、感情的にならず、冷静な観察に努めている。それゆえにと言うことであろう。シベリア抑留の過酷さやスターリン治世下のソ連体制の矛盾がおのずとにじみ出る作風となった。。
 高杉一郎は後にこう書いている。
 ”俘虜生活からようやく解放されて日本に帰ると、私はシベリアで経験したことや見聞きしたことを『極光のかげにーシベリア俘虜記』という一冊の本に書いた。風にそよぐ葦のような小さな人間の経験にすぎなかったから、私はできるだけひかえめに、遠慮ぶかく書いたが、それを読んだあるコミュニストは私にむかって「偉大な政治家スターリンをけがして、けしからん。こんどだけは見のがしてやるが」と、まるでオリュムポス山上に宮居する主神ゼウスのように高圧的な態度で言ったし、新日本文学会の系列下にあった「東海作家」という文学団体は私をコーラス・グループの練習場であるバラックに呼びだして集団的なつるしあげを加えた。彼らの罵声を浴びながら、私はストロングの言う「スターリン時代」とスターリニズムのひろがりは、日本の世論までもこんなにがっちりとカヴァしていたのかとあきれた”(わたしのスターリン体験)
 この高杉に向かって「偉大な政治家スターリンをけがして、けしからん。こんどだけは見のがしてやるが」と、まるでオリュムポス山上に宮居する主神ゼウスのように高圧的な態度で言い放った「あるコミュニスト」とは、宮本顕治であったたことを後に高杉は証言している。

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