物の本質について (岩波文庫 青 605-1) の感想

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参照データ

タイトル物の本質について (岩波文庫 青 605-1)
発売日販売日未定
製作者ルクレーティウス
販売元岩波書店
JANコード9784003360514
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 自然哲学・宇宙論・時間論

購入者の感想

 本書が持つ意味は数多くある。第一に『エピクロス哲学の原子論的自然観』を述べていることである。エピクロス哲学というのは快楽主義が有名だが、実はそれだけに寄って立つものではなく、『原子論的自然観』(以上二点扉書より)が、もう一つの基盤として支えているものなのである。

 第二は原子論的自然観の骨格となっている「因果性」を駆使し、世界を眺め、そして記されているということだろう。ここで「因果性」という語を用いたが、本書は、「因果律」といえるほど徹底した「自律」を「因果」思考プロセスに込めているとは感じられないので、「因果的性格」すなわち「因果性」と書かせてもらった次第です。念のため。

 さて、このような書物を残したティトゥス・ルクレーティウス・カールス(B.C.94?-55)は、古代ローマ時代の詩人・哲学者であった。残された作品は僅かだが、それとは裏腹に影響は大きい。古代ローマの文章でもよく触れられているし、何よりコンスタンツ公会議の際、ポッジョ・ブラッチョリーニによって再発見され、ルネサンス世界に起こったインパクトは見逃せない。

 さらに、小生感ずる最大の意義は、因果性思考の「力」である。訳者は“まえがき”冒頭で『これは二千年も昔の素朴な自然科学を伝えている作品である。』と述べているが、小生はそう思わない。なるほど「数学」も「ボーアモデル」も「周期律」も知らなかっただろうが、現代の科学“現場”におけるルクレーティウス的因果性思考は、『観察と考察』の場面で、似通ったパターンとして現れているからである。

 アイテムの違いは、本質の違いではない。差異に注目するよりはむしろ、二千年前の思考パターンと、現代の思考パターンとの共通性が意味する、「思考パターンの持つ時間の突破力」という点にこそ、『狂者となり自殺した』(本書p320要約)とされる著者の、偉才が輝いている気がするのである。

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